研究課題
生物活性を示す化合物の多くは、その母核中に多環縮環型複素環からなるプリビレッジド構造を有する。このため多環縮環型複素環骨格の効率的合成法の開発は、新規生物活性物質の創製において、不可欠な課題であるといえる。今期において、主に、1)多環縮環型フラン環化合物の合成法の解析、2)calothrixin類による血液癌での抗腫瘍活性誘導体の創製を行った。1)多環縮環型フラン環化合物の合成法として、連続的環化芳香族化反応の詳細について解析した。本反応の初期段階における環化反応としては、過去の報告により[4+2]型と[2+2]型が競合的に進行すると考えられる。今回、ジエンの置換基を種々検討したところ、[4+2]型のみを優先的に進行させることに成功した。[4+2]型が優先した理由について、汎電子密度計算法によるB3LYP/6-31G(d)で計算したところ、本反応制御が生成物の安定性に依存していることを明らかとした。本環化反応が進行した後、ジエン上の置換基が脱離基としてさようすることで、三環が縮環した化合物の創製に成功した。2)calothrixin類はCalothrix cyanobacteriaより単離された強力な抗腫瘍活性天然物であり、その母核中に多環縮環型のカルバゾールキノンを含有している。calothrixin類は、その抗腫瘍活性の強力さにより、さまざまな合成展開がなされたが、多環縮環型構造をコア構造とすることによる合成的困難さ等により、未だ天然物を上回る抗腫瘍活性物質の創製には到っていない。また本化合物は、固形癌への活性は著しいものの、血液癌への活性が低いことが報告されている。これらのことより、今期において、血液癌に活性を示すcalothrixin誘導体の創製に着手した。その結果、インドール環上に種々置換基を導入した誘導体において、固形癌のみではなく、血液癌に対しても強力な抗腫瘍活性を有する誘導体の創製に成功した。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (13件) 備考 (1件)
Heterocycles
巻: 87 ページ: 357-367
10.3987/COM-12-12630
European Journal of Organic Chemistry
巻: 2013 ページ: 1805-1810
10.1002/ejoc211201652
Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters
巻: 23 ページ: 4637-4640
10.1013/j.bmcl.2013.06.015
http://www3.hoku-iryo-u.ac.jp/courses/1/007/index.html