研究課題
実験には,カタラーゼ活性阻害作用を有すると報告されている3つの生薬,オウゴン,リョクチャ,レモンバーム,を用いた.これらの生薬がどの程度カタラーゼ活性を阻害するかを確認するために,ESRオキシメトリー法を応用したカタラーゼ活性測定法を用いて実験を行った.生薬,カタラーゼ,4-hydroxy-2,2,6,6-tetramethylpiperidine N-oxide(TEMPOL)および過酸化水素を超純水で希釈したものを準備し,生薬に関しては,水に不溶な物質を除去するために0.22 umのフィルターでろ過を行った.カタラーゼ活性とTEMPOLのESRスペクトルにおける線幅の増加の関係から検量線の作成を行った.その結果、報告されているようにオウゴンとリョクチャではカタラーゼ活性阻害作用が認められたが、レモンバームではカタラーゼ阻害作用がほとんど認められなかったため,これ以降の試験には供しなかった。 過酸化水素の光分解による殺菌系にオウゴン(1 mg/mL)を加えた場合,オウゴンを添加していない場合に比べて約10倍の殺菌効果が得られることが分かった.また,オウゴンのみやオウゴンに光照射を行っても殺菌効果は得られず,過酸化水素のみの場合でも2分間ではほとんど殺菌効果は得られなかった。次に,オウゴンおよびリョクチャの濃度が黄色ブドウ球菌およびカンジダ・アルビカンスに対する殺菌効果に及ぼす影響を調べたところ,濃度依存的にヒドロキシルラジカル殺菌が増強されることが分かった。 平成25年度に予定しているラットを用いた創傷感染モデルにおける治療効果の検証については、予備検討でモデルの作製の段階まで進んでいる。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、ERSオキシメトリー法によるカタラーゼ活性の確認と過酸化水素光分解法との併用によるin vitro 抗菌活性の増強まで確認することができた。またin vivo治療効果試験に用いるラット創傷感染モデルの検討もすでに進めている。
当初の予定よりも早めてラットを用いたin vivoでの感染動物モデルの確立とそれを用いた治療効果(抗菌効果)の検証に注力する。薬剤耐性菌については、本年度新鮮分離株を集めて各種抗生物質に対する耐性菌をスクリーニングアップし、それらを用いて抗菌活性を評価する。実験的バイオフィルムについては、まずは静置条件でのモデルを構築し、化学療法剤に対して抵抗性であることを確認していく。
次年度は、研究成果を学会発表するための旅費、並びに論文投稿するための費用は多く発生する。研究に関しては、菌の培養関係や動物代などの物品費が中心になる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
J. Toxicol. Sci
巻: 37(2) ページ: 329-335
10.2131/jts.37.329