研究課題
平成23年度には3つの生薬,オウゴン,リョクチャ,レモンバームがどの程度カタラーゼ活性を阻害するかを確認した結果、オウゴンとリョクチャではカタラーゼ活性阻害作用が認められた。過酸化水素の光分解による殺菌系にオウゴンおよびリョクチャを加えると濃度依存的にラジカル殺菌が増強されることが分かった。平成24年度には、オウゴンおよびリョクチャはポリフェノールを含有することから、フェノール性水酸基が光酸化される際に溶存酸素が還元されて活性酸素(ROS)が生成することが想定され、これらROSによる抗菌活性の増強が期待されたので、この点を確認した。その結果、これら生薬に光を照射するとROSの生成が認められた。そこでフェノール性水酸基を分子内に多数保有するプロアントシアニジン(PA)を同様に処理した結果、オウゴンおよびリョクチャよりも過酸化水素光分解殺菌法の効果を強く増強することを見出した。PAにはカタラーゼ阻害作用は認められなかったことから、オウゴンおよびリョクチャによる活性増強は、カタラーゼ阻害よりもこれら生薬に含まれるポリフェノールの光酸化を介したROSの寄与が示唆された。平成25年度には、過酸化水素光分解殺菌法の40回繰り返し暴露による耐性誘導試験を実施したが、耐性誘導は確認されず、本法が既存抗生物質とは異なり耐性菌出現のリスクが極めて低いことを示唆するデータを得た。以上、過酸化水素光分解殺菌法は、既存抗生物質の代替となる耐性出現のリスクがない有望な抗菌法であり、ポリフェノールを含有する生薬や植物エキスを併用することで相乗的な抗菌効果が得られることを明らかとした。光照射を止めると水酸化ラジカルは速やかに消失することから、残留毒性も問題はなく、同時に照射後の局所組織の酸化的障害の進展があったとしても、併用している生薬や植物エキスの抗酸化作用により抑えられるという利点も期待できる。
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PLoS ONE
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http://www.redokuwa.dent.tohoku.ac.jp