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2011 年度 実施状況報告書

新型インフルエンザウイルスの薬剤耐性機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23590145
研究機関東京大学

研究代表者

田川 優子 (坂井 優子)  東京大学, 医科学研究所, 助手 (40178538)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2016-03-31
キーワードインフルエンザウイルス / 薬剤耐性 / サーベイランス / 抗インフルエンザ薬 / 新型インフルエンザ
研究概要

2009年春メキシコで発生した豚インフルエンザは新型インフルエンザパンデミックとなり世界を震撼させたが、現在では季節性・流行性のインフルエンザと同様の伝播性・病原性であることがわかり、取扱の厳重さは解消された。しかし、追加された季節性ウイルス(H1N1 2009)として今後も流行を続けていくと考えられる。現在、多くの抗インフルエンザ薬が開発され、新型インフルエンザの治療にも効果的であったが、多用・乱用によりウイルスが薬剤耐性を獲得することは必然であり、これをサーベイランスする必要があり、研究を行った。 今年度は4か所の協力医療機関において2010/11シーズンにインフルエンザにり患した患者から採取した薬剤投与前後の咽頭ぬぐい液等臨床検体を輸送していただいた。治療に使用された薬剤による内訳はオセルタミビル43人、ペラミビル60人、ラニナミビル34人、ザナミビル1人、非投与3人であった。総患者数141人の総検体数298について、まず、細胞でウイルスが分離できるかを検討したところ、205検体からウイルスを分離することができた。同時にすべての検体からウイルスRNAを直接抽出して、RT-PCRを行い、ダイレクトシークエンス法により、既知の薬剤耐性変異の有無を検索した。検索の結果、薬剤耐性変異はオセルタミビル投与においてH1N1で1例、H3N2で1例検出された。なお、ダイレクトシークエンス法では耐性変異が混在した場合、泳動パターンが二重に表示される。このような場合を偽陽性とすると、H1N1で2例が追加して相当した。ペラミビル投与ではH3N2投与に1例の変異例が検出されたが、H1N1投与で3例の偽陽性が検出された。いままでにペラミビルにおける耐性の報告例は少なく、計4例の検出例は高頻度であり、今後ウイルス性状や病原性など詳細な解析が必要である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2010/11年シーズンはH1N12009、H3N2、B型ともに流行し、協力医療機関より多くのインフルエンザウイルスにり患した患者から採取した薬剤投与前後の咽頭ぬぐい液等臨床検体を大量に得ることができた。当初の予定より多くの検体を解析し、薬剤耐性のサーベイランスを主目的に行ったため、検体中のウイルスRNAのクローンの塩基配列解析ではなくダイレクトシークエンス法による解析を行った。したがって、当初予定していたクローンの解析による詳細な解析と耐性ウイルスの性状解析については次年度に行う。 ただし、H1N12009の薬剤耐性部位の簡易検査法の開発が進んでおり、研究はおおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

引き続きインフルエンザり患患者の検体の解析を継続する。2011/12シーズンもH1N1、H3N2、B型がともに流行したという情報を得ており、今後、医療機関から検体が送付されてくる予定である。まずは細胞における分離と同時に検体中のウイルスRNAを抽出する。耐性変異の解析は細胞で分離したウイルスではなく、検体中のウイルスを直接RNA抽出することによって、患者体内でのウイルスの性状を解析する。ただし、送付される検体数によっては以下の解析の手順を変更する予定である。ウイルスRNAからRT-PCR産物をいったんクローニングして個々のクローンを解析する方法はわずかに発生した耐性変異を知るためには有効であるが、多くの検体を解析するにはダイレクトシークエンス法が有効で、耐性変異部分の泳動パターンから変異の有無を判断することによって耐性変異をいち早く検出し、報告する予定である。 今年度は大量の検体数が集積したためにダイレクトシークエンス法による解析を行ったが、そこで得られたウイルスについてはさらに詳細な解析を行う。また、ウイルスがどのように薬剤耐性を獲得するのか、また、その病原性はどのように変化するのかなど、薬剤耐性機構を解明することを目的に、分離ウイルスの増殖能の比較、薬剤感受性の比較、レセプター感受性の比較等の性状解析を行う。

次年度の研究費の使用計画

昨年度に引き続き、協力医療機関からの臨床検体を解析し、薬剤耐性のサーベイランスを行う。それに必要な、検体の輸送費、塩基配列解析に必要な試薬類、ウイルス性状解析に必要な細胞の培養関係の試薬や器具などの消耗品、協力医療機関との研究打ち合わせや成果発表に必要な旅費として使用する計画である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] One-Step Detection of the 2009 Pandemic Influenza A(H1N1) Virus by the RT-SmartAmp Assay and Its Clinical Validation2012

    • 著者名/発表者名
      Y. Kawai, Y. Kimura, A. Lezhava, H. Kanamori,. K. Usui, T.Hanami, T. Soma, J.Morlighem1 S. Saga, Y. Ishizu, S. Aoki, Y Sakai-Tagawa,
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 7(1) ページ: e30236

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0030236

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Mutation Analysis of 2009 Pandemic Influenza A(H1N1) Viruses Collected in Japan during the Peak Phase of the Pandemic2011

    • 著者名/発表者名
      Morlighem JÉ, Aoki S, Kishima M, Hanami M, Ogawa C, Jalloh A, Takahashi Y, Kawai Y, Saga S, Hayashi
    • 雑誌名

      PLoS One.

      巻: 6(4) ページ: e18956.

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0018956

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Seroprevalence of pandemic 2009 (H1N1) influenza A virus among schoolchildren and their parents in Tokyo, Japan2011

    • 著者名/発表者名
      Iwatsuki-Horimoto K, Horimoto T, Tamura D, Kiso M, Kawakami E, Hatakeyama S, Ebihara Y, Koibuchi T, Fujii T, Takahashi K, Shimojima M, Sakai-Tagawa Y,
    • 雑誌名

      Clin Vaccine Immunol.

      巻: 18(5) ページ: 860-866

    • DOI

      10.1128/CVI.00428-10

    • 査読あり
  • [学会発表] Sero-Prevalence of Pandemic(H1N1)2009 Influenza A Virus amang schoolchildren and their parents in Tokyo,Japan.2011

    • 著者名/発表者名
      K. Iwatsuki-Horimoto,他20人
    • 学会等名
      第59回日本ウイルス学会、国際微生物連合2011会議合同開催
    • 発表場所
      札幌、コンベンションセンター
    • 年月日
      2011.9.15

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公開日: 2013-07-10  

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