2009年メキシコで発生したブタインフルエンザは世界中を震撼させた。2013年には中国でH7N9のヒトへの感染例が報告され、高病原性鳥インフルエンザもヒトへの感染例がいまだに報告されるなど、我々は常にサーベイランスを強化する必要がある。また、季節性、高病原性ともに抗インフルエンザ薬による早期治療が重要であるが、耐性ウイルスの出現にも対応していかなくてはならない。我々は臨床検体から得られたウイルスを解析することによって、耐性変異の出現を監視し、そのウイルスの性状を解析して、薬剤耐性変異のメカニズムの解明を目的とした。 2010~2012年には 600検体以上を、2013年以降2016年までに数十検体を収集し、サブタイプの決定、ウイルスの分離、ウイルスの変異の探索を今年度も継続して行い、いままでに十数株で薬剤耐性変異がみつかったが、すべて既知の変異で、新規の変異は見つからなかった。また、H7N9やH5N1についても十数検体を解析したが、新規の耐性変異は検出することはできなかった。ウイルスの薬剤耐性獲得は、適切な薬剤の使用によって、新規の変異の出現がコントロールされていると理解できる。 さらに今年度は、毎年更新されるキットがその時の流行株やH7N9、H5N1についても判別可能か、その感度を調査し、キットによっては10~100倍の差があるものの、何れもインフルエンザウイルスを検出可能であることを確認した。 さらに、多くの検体から効率よく解析を進めるために、迅速なサブタイプ判別法として、迅速診断キットの溶解液から簡便にリアルタイムRT-PCRを行う方法を開発し、数個のウイルスが含まれていればサブタイプを判別可能であることを示した。また、サーベイランスに利用する目的で、H5やH7、耐性変異についてもリアルタイムRT-PCRで簡便に検出できる系を確立した。
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