研究課題/領域番号 |
23590150
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
根本 清光 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (90189366)
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キーワード | NMDA受容体 / 肝臓 / 肝肥大 / 環境化学物質 / 肝がん細胞 |
研究概要 |
本研究では、NMDA受容体2Cサブユニット(NR2C)遺伝子の発現亢進とそれに伴うNMDA受容体の機能変化が、環境化学物質(医薬品、農薬、食品添加物を含む)の肝肥大誘発作用、肝細胞傷害性、肝発がん性といった肝毒性発現にどのように関わるかを明らかにすることを目的としている。1年目は、(1)肝がん細胞で機能しうるNMDA受容体が発現していること、(2)その発現が細胞増殖に関連していること、(3)肝細胞増殖を伴う肝肥大を惹起する硝酸鉛のラットへの投与により、肝肥大の度合いに応じて、NMDA受容体NR2Cサブユニット(Grin2c)遺伝子の発現亢進率が上昇することから、フェノバルビタール(PB)、クロフィブレート(CF)、ピペロニルブトキシド(PBO)といった肝細胞肥大誘発を伴う肝肥大のみならず、肝細胞増殖を伴う肝肥大でもNMDA受容体が何らかの機能を発揮する可能性があること などを示した。2年目は以下のような研究を実施した。 1.肝細胞肥大を伴う肝肥大を惹起するとされる肝発がんプロモーターであるβナフトフラボン(BNF)、インドール-3-カルビノール(I3C)、および肝細胞傷害作用有するアセトアミノフェン(AA)をラットに投与し、得られた肝臓RNAでのGrin2c遺伝子の発現を検討した。その結果、I3CとAA投与群では顕著なGrin2c遺伝子発現亢進が認められたが、BNF投与群では有意な発現亢進は認められなかった。このことから、肝細胞傷害過程で、NMDA受容体が何らかの機能を発揮する可能性、Grin2c遺伝子発現は特定のタイプの肝肥大形式で引き起こる可能性が考えられた。 2.種々培養細胞株に、PB、CF、PBOを処理し、Grin2c遺伝子の発現誘導性を検討したが、現段階では、その誘導性を確認することが出来なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PB、CF、PBO、硝酸鉛といった肝肥大誘発物質に加えて、2年目は、さらにBNF、I3Cといった肝肥大誘発物質とAAといった肝傷害性物質をラットに投与後、肝Grin2c発現を検討し、新たに、肝細胞傷害過程で、NMDA受容体が何らかの機能を発揮する可能性、Grin2c遺伝子発現は特定のタイプの肝肥大形式で引き起こる可能性を見いだしたことは大きな成果であると考える。しかしながら、本研究の大きな目的であるGrin2c遺伝子の発現亢進メカニズムとNMDA受容体の肝細胞における機能の解明については、PB、CF、PBOを処理した培養細胞株で、Grin2c遺伝子の発現亢進が現段階では認められておらず、難航を極めている。この点から、本研究の達成度は「やや遅れている」と判断せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
1.培養細胞株に種々化学物質(これまでin vivo実験でGrin2c遺伝子発現亢進を誘発させた化学物質)を処理して、Grin2c遺伝子を発現させる実験系を何とか確立する。さらに、Grin2c遺伝子の発現亢進機構やNMDA受容体の機能について検討を加えることとする。 2.1年目に、肝がん細胞で機能しうるNMDA受容体が発現していること、その発現が細胞増殖に関連していることを見いだしている。この研究をさらに発展させ、NMDA受容体が発現している肝がん細胞にNMDA受容体に対する阻害剤メマンチン処理を行い、遺伝子発現の網羅的解析をDNAマイクロアレイにより実施することとする。これにより、NMDA受容体の肝がん細胞での機能を類推することとする。 以上の研究により、本研究の目的を達成するものとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
RNA・タンパク質発現の解析に関わる試薬、DNAクローニングに関わる試薬、細胞培養試薬、プラスチックチューブ・チップ・培養ディッシュなどのプラスチック器具類といった消耗品費として700千円、学術誌で公表する際の別刷代・投稿料・校正費として200千円、研究成果を学会発表するための出張旅費として150千円、研究補助費として500千円などを予定している。
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