研究課題/領域番号 |
23590153
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
高橋 勝彦 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (80307066)
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研究分担者 |
今井 正彦 星薬科大学, 薬学部, 助教 (40507670)
高橋 典子 星薬科大学, 薬学部, 教授 (50277696)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | p57Kip2 / 核内受容体 / 脂溶性生理活性物質 / ビタミンA / ビタミンD / 長鎖不飽和脂肪酸 / 細胞周期 |
研究概要 |
p57Kip2の核内受容体タンパク質への作用を解明するため、p57Kip2の欠損細胞株であるBeWo細胞を用いて、これにp57Kip2発現誘導を行った。各種核内受容体タンパク質の検出をイムノブロット法で行ったところ、BeWo細胞ではp57発現によりVDR、RXRの発現量が有意に増加した。免疫沈降法から、各種核内受容体のうちVDR、RXRとp57との複合体形成が認められた。BeWo細胞はcAMP賦活剤やレチノイン酸・ビタミンD3の刺激により胞合化による分化誘導を示す。p57発現はBeWo細胞の胞合化を促し、更に脂溶性ビタミン(レチノイン酸、ビタミンD3)による分化誘導を亢進した。p57発現誘導したBeWo細胞では、cAMP賦活剤ホルスコリン刺激で分化誘導に加えて、p57の安定化、p57とRXRとの複合体形成の亢進が認められた。ホルスコリンによるcAMPの増加は、細胞内でcAMP依存性リン酸化酵素(Protein Kinase A (PKA))の活性化を促すことから、p57発現がPKAに及ぼす影響を検討した。PKAを構成する制御サブユニット、触媒サブユニットそれぞれの量的変化は認められず、細胞内局在性にも影響しない事が示された。レチノイン酸刺激では、p57とVDR、RXRとVDRとの解離が認められた。p57遺伝子欠損マウスが骨形成不全を示すことから野生型とp57-/-由来の初代培養骨芽細胞を調整し、各種核内受容体の発現レベルやp57との相互作用を検討した。興味深い知見としてVDRの発現量がp57欠損で現象すること、また骨芽細胞でVDRとp57との複合体形成を示す事、更にビタミンD3に依存するVDRの転写活性をp57は支える事が認められた。骨形成におけるp57の役割の一つに、ビタミンD3によるVDRの活性化の支持がある事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大学での教育業務と並行する中で、実験動物の維持、培養細胞の維持など全ての研究作業を代表者が一人で進めている現状を考慮すれば、研究遂行はこれまで滞りなく進めていると自負している。本研究の更なる発展を実現するにあたり、申請時の研究体制を具体化出来る様に努めると共に旧知の研究者とのコミュニケーションを密にとり、本交付金の成果を研究業績としてまとめることで医療現場への還元を目指して、臨床医とのコミュニケーションを図っていく所存である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究で用いたBeWo細胞についてp57発現によるRAR、VDRの転写活性を各々の応答配列をもつレポータープラスミドで定量的測定する予定である。本細胞では更にPPARとp57との関係を検討していきたい。脂溶性ビタミンや脂溶性生理活性物質(長鎖不飽和脂肪酸やその代謝物(プロスタグランディンなど)の処理による影響も同時に検討する。申請時の計画に沿って、p57遺伝子欠損マウスと野生型マウスの臓器(特に胎盤、脳、肝臓)を用いて各種転写因子(RAR、VDR、PPAR、RXRなど)の発現量やp57との相互作用の有無を検討する。初代培養細胞の脂溶性ビタミン添加によってうける形体的、内分泌学的あるいは生化学的変化を解析する。上記の検討から得られる知見を基に、p57遺伝子欠損マウスの示す表現型が脂溶性ビタミンで回避できる可能性を見出したい。p57遺伝子欠損マウスは胎盤肥大を示し、母体の妊娠性高血圧症の原因となることから、これの回避・予防法としての脂溶性生理活性物質の服用の可能性を明らかとするため、食餌に脂溶性ビタミン(ビタミンA、ビタミンD3)やDHAやEPAなどの長鎖不飽和脂肪酸を添加して動物に投与を試み、p57欠損による疾患に対する脂溶性ビタミンや脂肪酸の予防効果について検討を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養と遺伝子欠損マウスの維持、核内受容体などの生化学的、分子生物学的解析のいずれにも信頼できる試薬及びリガンドとしての脂溶性ビタミン類や不飽和脂肪酸は本研究の遂行に必須である。本年度はマウスの効率的維持に加えて脂溶性ビタミン混合食餌を与えるマウスをキープするため実験動物維持と特殊食餌の費用とを合わせて190千円を充てる。プラスチック製器具類はディスポのピペット、円沈管、マイクロチューブ、組織培養用様気、マイクロピペットのチップ等の一箱の単価が50千円のものを16箱使うため800千円を充てる。試薬類のうち特異的抗体(単価50千円)10種の購入を予定しており500千円とする。遺伝子工学試薬のうち定量PCR試薬(90千円)とプライマー合成(5千円を6個)とルシフェラーゼ試薬(80千円)を合わせて200千円とした。印刷費、学会誌投稿費、研究成果発表費を合わせて計100千円とした。
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