平成26年度は、まず、膜破壊型殺菌消毒剤であるカチオン性の第四アンモニウム塩である、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウムについて研究室内での馴養培養により取得した大腸菌の野生株および耐性株を用いてタンパク質電気泳動システムを用いてプロテオーム解析を継続実施した。その結果、野生株に比して耐性株に特異的に発現量が増大したタンパク質を複数確認することができた。 また、平成25年度構築を試みたプロテオーム解析を含むバイオインフォマティクス解析システムを用い、大腸菌の多剤耐性を担うmarレギュロンの転写調節因子の一つである転写抑制因子MarRの複数の変異体に見出された点変異の多剤耐性獲得に及ぼす影響を調べた。その結果、MarR変異体の点変異が染色体DNA上のオペレーター配列であるmarOとの結合部位として知られている領域にある場合、MarR上のmarOとの結合部位の立体構造が直接変形することにより、それ以外の領域にある場合、marOとの結合部位以外のMarR上の二次構造が変形することによりmarOとの結合部位の立体配置が変化することにより、それぞれMarRとmarOとの結合性が変化し、marレギュロンの転写の抑制が弱まり、結果として転写が活性化され、主にMarAの高発現から様々な多剤耐性に関与する耐性化因子の発現活性化を引き起こすことが示唆された。 以上から、marOと親和性が高い、DNA結合性の物質(例えばタンパク質)によりmarレギュロンの転写の抑制を行うことにより、多剤耐性菌の出現を制御できる可能性が示された。
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