研究課題/領域番号 |
23590159
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
高橋 浩二郎 産業医科大学, 大学病院, 部長 (70389477)
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研究分担者 |
柳原 延章 産業医科大学, 医学部, 教授 (80140896)
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キーワード | 植物性エストロゲン / 細胞膜エストロゲン受容体 / ダイゼイン / ノビレチン / カテコールアミン生合成 / チロシン水酸化酵素 / 抗ストレス効果 / 分子クローニング |
研究概要 |
本年度の研究計画は、細胞膜エストロゲン受容体に対しての受容体の分子クローニングについて検討することであった。まず、1)その分子クローニング方法を実験的にシステム化することとした。副腎髄質細胞膜に対する抗体をウサギにて免疫感作して作成した。次に、ウシ副腎髄質のpolyA+RNAをT7phage genomeに取り込み、cDNAライブラリーを作成した。そのphage を大腸菌に感染させて蛋白質発現をさせ、ファジー抗体を用いて選別した。得られたすべてのクローンに対して、シークエンスアナライザーにより塩基配列を決定した。現在、このシステムを用いて、細胞膜エストロゲン受容体のクローニングを継続している。2)副腎髄質から細胞膜を分離して、その細胞膜に対する[3H]17beta-estradiolの特異結合に影響する植物性エストロゲンをスクリーニングした。その結果、大豆成分のゲニステインやダイゼイン、さらには葡萄の果皮成分で赤ワインの成分レスベラトロールが比較的低濃度で[3H]17beta-estradiolの特異結合を阻害した。また、その他の植物フラボノイドについても検討中である。3)植物フラボノイドのノビレチンによるカテコールアミン動態について培養ウシ副腎髄質細胞等を用いて検討した。その結果、ノビレチンはウシ副腎髄質細胞において、それ自身でCA生合成を促進した。その機序として、サイクリックAMP-依存性蛋白質リン酸化酵素等を活性化して、チロシン水酸化酵素のリン酸化及び活性化によるものと思われた。一方、ノビレチンはACh刺激によるCA生合成及び分泌を抑制した。これらの結果を、第10回国際カテコールアミンシンポジウム(Pacific Grove, California、2012年9月)及び第86回日本薬理学会年会(福岡、2013年3月)等において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画に対して、ほぼ計画に沿って遂行されたが、定年退官前の年度であったために、職務(薬剤部長)としての仕事に追われて、実験する時間はあまり十分に取れなかった。当初の計画では、細胞膜エストロゲン受容体の分子クローニングのシステムを確立することであった。現在、そのシステムはほぼ確立されて、クローニングを行っている。さらに、植物性フラボノイドのノビレチンのカテコールアミン生合成や分泌に対する反応を調べることであった。上記で述べたようにこれらの植物性フラボノイドがカテコールアミン生合成に対して単独の効果としては細胞内のcAMP依存性プロテインキナーゼやCaM kinase IIを介して、チロシン水酸化酵素の活性化が起こることを証明した。一方、アセチルコリンの刺激反応に対してはカテコールアミン生合成やチロシン水酸化酵素を抑性するという2相性の作用を引き起こすことが判明した。これらの結果は、ストレスや精神的興奮により生ずるアセチルコリンを介するカテコールアミン生合成や分泌に対して抑制作用を示すことから、これら植物性エストロゲンに抗ストレス効果の可能性を示唆した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として、新規植物性エストロゲン受容体に対する作動薬をスクリーニングし、新たな化合物としての薬理作用、特に抗ストレス効果について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額(繰越額)が約51.9万円となったのは、上述したように定年退官の年度であったために、実験する時間が今まで通り十分に取れなかった。 次年度の研究費の使用計画として細胞培養関係、細胞内シグナル用キット、放射性標識化合物などの消耗品に50万円、細胞膜エストロゲン受容体の分子生物学的研究用試薬などに46万円、人件費(実験アルバイト費用)及び謝金等に60万円、さらに日本薬理学会年会(仙台)や日本薬学会大会(熊本)の発表などの旅費として15万円を計上したい。
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