研究概要 |
近年のライフスタイルの変化に伴い、糖尿病患者やその予備軍と呼ばれる患者の増加は、世界的な社会問題となっている。糖尿病は、血糖値が異常高値を示す状態であり、それ自身ほとんど無症状である。しかしながら、症状の長期化に伴い様々な合併症を引き起こすリスクが増加する。合併症発症の要因として、近年、終末糖化産物、並びにその糖化反応中間体が注目されてきた。そこで、本研究では、糖化反応中間体である dihydropyrazine 類(DHPs)のモデル化合物として、2,3-Dihydro-5,6-dimethylpyrazine (DHP-1)、2,3-Dihydro-2,5,6-trimethylpyrazine (DHP-2)、および 3-Hydro-2,2',5,6-tetramethylpyrazine (DHP-3) を用いてヒト肝ガン細胞である HepG2 細胞に対する影響を検討した。DHP-1、DHP-2 および DHP-3 をそれぞれ 1 mM 調製して細胞に曝露した結果、いずれの DHP も細胞障害性を示した。さらに、genome DNA を市販のキットを用いて抽出し、ヌクレアーゼを反応させ digestion を行い、紫外部分光光度検出器と電気化学検出器を接続した HPLC を用いて各ヌクレオシド濃度を定量した。その結果、曝露された DHP の種類に関わらず酸化的ストレスの指標である 8-OHdG は検出されず、さらに各ヌクレオシド濃度比に顕著な差は見られなかった。この時、断片化された genome DNA を検出するためアガロースゲル電気泳動を行ったが、いずれの DHP 曝露 genome DNA においても断片化 DNA は検出されなかった。以上の結果から、今回検討した条件化では、DHP 類は哺乳動物細胞に対して遺伝子障害性を有していない可能性が考えられた。
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