研究課題
臭素化難燃物質テトラブロモビスフェノールA(以下、TBBPAと略す)を周産期(妊娠10日目~離乳時)に混餌投与で暴露(0, 10,000 ppm)し、仔マウス(4週齢)にRSウイルスA2株を経鼻感染させた。感染1、5日後に肺を摘出し、凍結包埋を実施し、抗IL-24抗体を用いた免疫組織染色を委託した。ウイルス非感染マウスでは、抗IL-24抗体はほぼ陰性なのに対して、RSウイルス感染マウスでは、肺胞の実質組織でマクロファージなど免疫担当細胞が浸潤している領域にて陽性細胞が見いだされた。そして、この陽性細胞はTBBPA投与群で、かつ感染5日目の組織で顕著であった。この様に、マイクロアレイによる網羅的遺伝子解析で見出したサイトカインIL-24について、肺組織においてタンパク質レベルで発現上昇を確認できた。なお、このたんぱく質での確認結果をもって、当初の計画通りにin situ hybridizationは実施しないことにした。培養マクロファージであるRAW264.7細胞を用いて、in vitroでのTBBPA処理時にRSウイルス感染細胞でIL-24の発現上昇がみられるか検討を開始した。RAW264.7細胞をTBBPA(0~10 uM)添加培地で24時間培養後、RSウイルスを感染させ(MOI=2)さらに培養して、経日的にRNAを調製した。これらサンプルをリアルタイムRT-PCRを用いてIL-24の遺伝子発現量を検討した。その結果、この遺伝子発現は非感染より感染で高く、かつTBBPA 10uM処理みより約10倍発現が上昇していた。同様の培養条件で、タンパク質の解析を抗IL-24抗体を用いたウェスタンブロッティングで検討した。その結果、RAW264.7細胞においてもTBBPA処理によりIL-24タンパク質の発現上昇を確認できた。
2: おおむね順調に進展している
H23年度の目標が、本研究の鍵となっている特殊なサイトカインIL-24の発現を肺組織や細胞で検出することであった。本年度の研究を通じて、in vivoでは免疫組織学的に、そしてin vitroではウェスタンブロッティングによりタンパク質レベルでウイルス感染時にTBBPAによってIL-24の発現が上昇することを確認できた。よって、当初の計画通りに研究が遂行できたと判断した。
発達期TBBPA暴露/RSウイルス感染において、感染病態の増悪化、即ち肺炎が進行する際に、IL-24発現が先行する(inducer)のか、あるいは進行後(indicator)の発現なのかを明らかとしたい。そこでtime courseを精査するため、引き続きRAW264.7細胞培養系において検討する。そしてIL-24の検出とともにTNF-alphaなど炎症性サイトカインを指標に利用する。また、IL-24と炎症性サイトカインの発現がリンクしているのか否かをRNAiで検証したい。
抗体、ELISAキットなど生化学試薬、リアルタイムPCR、siRNAなど遺伝子工学試薬培養用試薬(培地など)、培養器具(チューブ、フラスコなど)、国際学会発表費用(EuroTox2012)
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
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