研究課題/領域番号 |
23590163
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
大森 毅 科学警察研究所, 法科学第三部, 室長 (70356195)
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研究分担者 |
川原 一芳 関東学院大学, 工学部, 教授 (20195126)
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キーワード | 有機リン系化合物 / 有機リン分解酵素 / 神経剤 / サリン / 除染 |
研究概要 |
前年度に作成した、遺伝子変異を導入したOPH、すなわち136Leu、254Tyrおよび257Hisの3箇所のアミノ酸を置換したOPH、KGU0094(野生株 136Leu、254Tyr、 257His)、KGU0094m(Leu136Tyr)、KGU0211(Leu136Asp)、KGU0225(His257Leu)、KGU0227(Tyr254His)、KGU0245(Tyr254Arg、His257Leu)の有機リン系化合物分解活性の特性を調べた。各種二価イオンを様々な濃度で添加し、パラオキソン分解活性および神経剤分解活性を測定した。 (1)パラオキソン分解活性:最も高い活性を示したKGU0227は10 mM Co2+が活性化に最も有効であった。一方でZn2+添加の場合の活性は Co2+の1/20程度であった。KGU0094およびKGU0245ではイオンの違いによる活性の差は認められなかった。(2)各種神経剤分解活性:サリン(GB)、ソマン(GD)、タブン(GA)、シクロヘキシルサリン(GF)およびVXの分解活性を調べた。最も活性の高かったKGU0227は10 mM のCo2+を添加した場合に最も効率よく神経剤を分解し、GB、GA、GDおよびGFをほぼ完全に分解し、VXを45%分解した。Zn2+添加の場合は分解活性がやや低下し、GDは90%、VXは25%程度の分解率であった。KGU0245はこれに次いで神経剤分解の効率が高く、二価イオンの違いによる活性の差は認められなかった。KGU0094m、KGU0211およびKGU0225は野生株であるKGU0094よりもVX分解活性は低下した。 これらの変異酵素のうち最も活性の高かったKGU0227遺伝子にHis-Tag配列を付加した酵素を作成し、酵素タンパク発現を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
塩基置換を導入したOPH遺伝子から発現させた酵素5種類に加えて野生株を含めた6種類の酵素について神経剤5種の分解に必要な二価イオンの種類と濃度の検討を実施し、最も高い活性を示すOPHのアミノ酸置換を見つけることができたと同時に、この酵素の最も活性が高くなる二価イオンの種類と濃度を決定した。さらにHis-Tagを導入した酵素タンパクの調製も達成しており概ね当初の予定通りに研究が進行できているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子変異を導入したOPHを作成し、それらの神経剤分解活性の特性を比較した結果、高い分解活性を有する酵素を作成することができたので、神経剤分解バイオリアクターの試作に向けた検討として、OPH大量精製法の検討およびバイオリアクターの試作を実施する。His-Tag導入酵素を精製し、ニッケルカラムにキレーティングさせることで固定したバイオリアクターを作成することの他に、大量の酵素を効率よく担体に結合させることができる手法を検討する。続いてバイオリアクターにより神経剤の分解が起きていることを確認し、さらに分解効率を上げるための水溶液の透過速度や反応温度、バイオリアクターの再利用の可能性や、活性を保持できる保管条件等について最適条件を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は主に消耗品費であり、次いで研究成果発表のための経費、および成果報告作成にかかる経費である。消耗品はOPH遺伝子を導入したベクタープラスミドを組み込んだE. coliを培養するための器具・試薬類、酵素活性測定のための器具・試薬類、酵素精製のための器具・試薬類およびバイオリアクター試作のための器具・試薬類の購入に充当する予定である。その他の用途として、研究成果の中間発表のための学会参加登録費および出張旅費、論文投稿のための英文校閲、投稿経費としての支出を予定している。 備品として投稿論文作成用にパーソナルコンピューターの購入を計画している。
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