研究課題/領域番号 |
23590164
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
最上 知子 国立医薬品食品衛生研究所, 機能生化学部, 室長 (90174333)
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研究分担者 |
奥平 桂一郎 国立医薬品食品衛生研究所, 機能生化学部, 研究員 (10425671)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / コレステロール / インフラマソーム / IL-1beta |
研究概要 |
カーボンナノチューブはアスベストと類似した形状を持つことから健康への影響が懸念され、中皮腫誘発や動脈硬化促進の作用が報告されている。申請者は、多層カーボンナノチューブがマクロファージに貪食されると炎症性サイトカインIL-1βの産生を促進することを見出した。またこのIL-1β産生応答が細胞内コレステロール量により制御される予備的知見を得たことから、本研究ではそのメカニズムの解明を目的とする。 今年度は、(1)多層カーボンナノチューブの認識とIL-1β産生への伝達を担うタンパク複合体インフラマソームの構成因子を明らかにすることを目的とし解析を行った。多層カーボンナノチューブのIL-1β産生作用は繊維長と径により異なり、特定の大きさの製品が強力な作用を示した。IL-1β前駆体切断に伴い活性型caspase-1が増加し、IL-1β産生はcaspase-1阻害剤で抑制された。また培地への高濃度カリウム添加、ならびにNod様受容体NLRP3をsiRNAでノックダウンすることにより抑制された。したがって、NLRP3を含むインフラマソームが多層カーボンナノチューブによるcaspase-1の活性化とIL-1β産生に関与することが示された。(2)コレステロールによるIL-1β産生応答の制御については、各種スタチン類やシクロデキストリン処理で細胞コレステロールを低下させ検討を行った。いずれの処理によってもカーボンナノチューブによるIL-1β産生が減少することが判明した。しかしながら、その程度は実験間で大きく変動していた。その要因が薬剤の溶媒とTHP-1細胞の分化後の培養条件にあることが判明したことから、同一条件下での再検討を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、多層カーボンナノチューブによるIL-1β産生促進の応答に関わる因子の同定が目標であり、Nod様受容体NLRP3を含むインフラマソームとcaspsase-1の関与を明らかにした。コレステロールによるIL-1β産生応答の制御については、各種スタチン類やコレステロール低下薬の影響を明らかにすることができた。コレステロールを細胞外に排出するトランスポーターABCA1の役割の解析は次年度に繰り越した。
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今後の研究の推進方策 |
多層カーボンナノチューブによるIL-1β産生応答のコレステロールによる制御について、メカニズムの解明を進めるとともに、コレステロール排出トランスポーターABCA1の役割を明らかにする。メカニズム解明は次のように行う。コレステロール生合成の各段階の阻害剤を用いて制御に関わる代謝産物を同定する。また、コレステロール低下がインフラマソーム構成因子やIL-1β前駆体の転写制御、貪食からインフラマソーム活性化へのシグナル伝達の各過程、さらにはオートファジーに及ぼす影響を解析し、作用点を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
人件費(2ヶ月分、約70万円)の支出予定を、派遣研究員が産休に入ったために、復帰後の次年度に繰り越した。平成24年度においては、当該派遣研究員がzinc finger nucleaseテクノロジーを用いてABCA1遺伝子を欠損する細胞を作成し、カーボンナノチューブによるIL-1β産生応答におけるABCA1の役割を明らかにする予定である。
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