研究課題
カーボンナノチューブはアスベストと類似した形状を持つことから健康への影響が懸念され、中皮腫誘発や動脈硬化促進の作用が報告されている。研究代表者らは、多層カーボンナノチューブがマクロファージに貪食されると炎症性サイトカインIL-1βの産生を促進することを見出している。本研究では、多層カーボンナノチューブによるIL-1β産生応答が細胞内コレステロール量により制御される現象を明らかにし、そのメカニズムを解明することを目的とする。昨年度までの研究において、多層カーボンナノチューブが成熟型IL-1βをプロセシングしてIL-1β産生を促進する過程には、NLRP3を含むインフラマソームが関与しcaspase-1が活性化されることすることを明らかにした。引き続きコレステロールによるIL-1β産生応答の制御について生合成阻害剤を用いて検討を行ったところ、多層カーボンナノチューブによるIL-1β産生は各種のスタチン処理により低下すること、この低下はHMG-CoA還元酵素産物のメバロン酸を添加することで防止されることを見いだした。多層カーボンナノチューブによるIL-1β産生の制御にメバロン酸経路が関わることが示唆されることから、今年度はさらに下流の阻害剤・中間体を用いて検討を行い、関与する代謝物を同定した。また多層カーボンナノチューブのTHP-1マクロファージへの取りこみを、フローサイトメトリーを用いて側方散乱光SSCの測定により評価したところ、取りこみはスタチン処理により有意に低下することが判明した。したがって、コレステロール生合成の阻害によりメバロン酸経路中間体が低下すると、多層カーボンナノチューブのマクロファージへの取りこみが低下し、結果としてNLRP3を介するIL-1βプロセシングが抑制される機序が推定された。
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