マラリア原虫はヒトの赤血球に寄生を繰り返し、年間感染者数3億人以上うち200万人以上が死亡している人類史上最も重篤な寄生虫感染病である。感染症マラリアの深刻な問題としてキナクリンに代表される抗マラリア薬に対する薬剤耐性マラリア原虫の出現や、地球規模の環境変動(特に温暖化)・交通手段の発達によるグローバル化によって感染者数の増加・感染地域の拡大が上げられる。このような背景のなかWHOなどの国際機関ではマラリア撲滅指針の一つに「早期発見および適切な早期治療」を掲げている。近年、予防・治療分野では薬剤を塗布した蚊帳による感染予防は大きな成果を上げ、また生薬をベースとした抗マラリア薬の開発は実を結びつつある。しかし診断法に関しては、イムノクロマト法やPCR法が開発されてはいるものの、検出感度や検出時間などの面から今だ100年以上前に確立されたギムザ染色による顕微鏡下での観察診断が主流とされている。そのため特に感染初期段階での診断に多大な時間と労力を必要とし、早期発見とその先に続く治療の大きな妨げとなっている。そのため感染症マラリア撲滅にはギムザ染色法に代わる感染初期に感染の有無を見極める事のできる迅速な診断手法の開発が急務と考えられる。そこで申請者は全年度までに大量(3百万個)の血球細胞の中からたった一個のマラリア感染赤血球を見つけ出すことを可能とする簡便かつ迅速なマラリア診断手法の基礎技術を確立した。今年度は特に色々な細胞等の混ざった全血中から効率的に赤血球だけを選別することで効率的な検出を可能とする基礎技術を他の研究グループと共同で組み上げた。これらの技術を総合することで効率的なマラリア検出が可能となると考えている。
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