研究課題/領域番号 |
23590169
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
小山田 一 秋田大学, 医学部, 臨床検査技師 (80375310)
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研究分担者 |
守時 由起 秋田大学, 医学部, 講師 (90585522)
茆原 順一 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80197615)
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キーワード | PGD2 / CRTH2 / CCR3 / 気道上皮細胞 / 好酸球 |
研究概要 |
昨年までの検討から、CCR3とCRTH2を細胞膜に発現しているヒト好酸球において、PGD2はCCR3の迅速なinternalizationを誘導することを見いだした。さらにヒト末梢血レベルでCCR3とCRTH2の発現をアレルギー患者や健常人で検討したところ、細胞の表面発現は正の相関関係にあることが明らかになった。CCR3はG蛋白共役型受容体(GPCR)であり、リガンドによりinternalizationが起こることが知られていることから、PGD2の未知の受容体候補としてCCR3を考え、薬理学的な検討を行った。この結果、PGD2はCRTH2を介してCCR3のinternalizationを惹起することがわかった(日本アレルギー学会学術集会で発表)。この結果は、PGD2はCCR3のリガンドとして機能しないことを示唆するものであったが、臨床的にも興味深い知見が得られた。 本年度は、気道上皮細胞株であるNCI-H292細胞を用いてCRTH2とCCR3のsiRNAによるノックダウンを試みた。細胞培養後にsiRNAを加えるプロトコルと、細胞培養開始と同時にsiRNAを加えるプロトコルを比較し、結果はqRT-PCRにて検討した。しかしながら、いずれの方法においてもCRTH2のノックダウンにより細胞死が認められ、適正な条件の設定を行う必要がある。 一方、種々の化合物によってヒト好酸球のGPCRの発現変化を検討していたところ、レチノイドがCCR3の発現を増強することを見いだし、そのメカニズムと機能的な役割について明らかにした(Allergy, in press)。また、これまで報告のないGPCRがヒト好酸球に発現することを確認し細胞機能への影響についても検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PGD2は、その親和性は弱いながらもPGE受容体(EP)、PGF受容体(FP)、トロンボキサン受容体(TP)、核内受容体であるPPARγに対して結合することが知られているが、ここまでの検討から関与は否定的であった。さらに受容体のinternalizationを足がかりにGPCRの関与について検討したが、その内容は前述したとおりである。さらに各種シグナルのinhibitorを用いたPGD2による機能経路の検討を行ったが、MAPKやGi蛋白の関与が示唆される結果であり、細胞膜受容体、GPCRを中心に検討を行っている。 平成24年度はデータ蓄積の過程から重要な知見が得られたため、並行して好酸球のGPCRについての検討を行った。好酸球の選択的遊走に最も重要なケモカイン受容体CCR3の発現誘導因子としてレチノイドを見いだしたことは、アレルギー免疫反応のメカニズムや今後の治療応用を考える上で非常に重要である。また、GPR120やGPR30を介した細胞機能制御といった新たな知見が得られ、平成25年度以降の計画を立てる上で有益な情報となった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのアゴニストとアンタゴニストによる機能解析と並行して、siRNAによるCRTH2とDPのノックダウン細胞を用いたPGD2の機能解析を引き続き検討するが、本年度の結果から基礎的な条件作りに時間がかかることが予想される。逆のアプローチとして、GPCRをターゲットとした膜蛋白ライブラリを用いた網羅的受容体探索を行うことを検討してみたい。すなわち、PGD2または合成化合物を固相化して、各GPCR発現細胞から得られた膜蛋白ライブラリに結合した受容体を溶出し、MS/MSにて同定するものである。これにより大幅な時間短縮が期待でき、その後の細胞レベルでの機能検討に時間を費やすことができると考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、RNAiによるノックダウンが予想外に細胞に与えるダメージが大きく、予定していた成果発表旅費を使用しなかったためである。 次年度は、CRTH2の特異的アゴニストもしくはPGD2を固相化し、膜蛋白質ライブラリとの結合活性を行えるかどうか検討し、必要に応じて外部施設との共同研究を行っていくための打ち合わせ旅費を計上する。これまでに引き続き、細胞レベルでのPGD2の機能解析を行うために、細胞株の購入費、維持費、ノックダウンに関わる消耗品費、細胞機能の解析のための消耗品費を計上する。
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