研究課題/領域番号 |
23590172
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
佐久間 勉 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (30250468)
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研究分担者 |
河崎 優希 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (30432107)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 性差 / CYP / エピジェネティック / 発現調節 / マウス |
研究概要 |
マウス肝細胞初代培養系を用いたレポーターアッセイや肝臓核抽出液を用いたゲルシフトアッセイにより、-99/-87領域へのHNF4αの結合がCyp3a41遺伝子の転写活性化に重要な役割を担う事が明らかになった。それらの実験で雌雄差が観察されなかったことから、クロマチン構造の雌雄差が性特異的発現の一因と仮定し、ChIPアッセイによるクロマチン中のHNF4αの結合を解析した。その結果、雄に比べ雌で数倍多いHNF4αの結合が観察された。Cyp3a41遺伝子は出生から幼仔期まで雌雄ともに発現し、性成熟に伴い雌特異的となる。ChIPアッセイを用いてクロマチン中のHNF4αの結合を調べたところ、mRNA発現と相関が認められた。同様に脳下垂体摘出によりCyp3a41 発現は消失するが、この場合もHNF4αの結合とmRNAとの間に相関が観察された。これらの結果より、Cyp3a41遺伝子プロモーター近傍のクロマチン構造に雌雄間で違いがあり、それにより転写因子の結合性に差が生じると推測された。ヒストンタンパク質修飾を調べたところ、転写促進領域に多いヒストン3リジン4ジメチル化は雌優位であり、転写抑制とヘテロクロマチンの維持に関連するヒストン3リジン27トリメチル化は雄で優位であった。これらの結果は、Cyp3a41遺伝子プロモーター近傍クロマチン構造に雌雄差があり、それが性特異性の一因である可能性を支持している。 遠位調節領域におけるクロマチン構造の違いと、性特異的発現への関与の可能性についても解析した。Cyp3a41遺伝子5’遠位上流域には、-4.0kbと-2.7kbの2カ所にも推定HNF4α結合領域が存在している。ChIPアッセイによる解析ではHNF4αの結合量に雌雄差はなく、その付近にクロマチン構造に雌雄差はなく、性特異的発現への寄与も低いことが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究ではChIPアッセイによる解析を主たる研究手段としている。しかし、我々が用いている手法では、培養細胞を素材とした解析では非常に良好な結果が得られたが、肝組織を用いた解析では、データにばらつきが認められ精度良く解析することができなかった。その問題の解決に時間を費やしたため、研究計画の進行に若干の遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は上述の理由のため研究の進行に若干の遅れが生じた。平成24年度は初年度に実施できなかった実験を実施すると共に、当初予定の研究計画に沿った実験も実施する予定である。研究対象として肝臓に発現している遺伝子を解析しているが、遊離肝細胞では当該遺伝子の発現は大幅に低下している。そのため遊離肝細胞を用いた検討に加え、肝組織での解析も重要と考えている。初年度に問題となった肝組織を用いたChIPアッセイについて問題点を解決し、本研究のスムーズな進展を計る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述の理由のため平成23年度は当初予定の実験の一部を実施することができず、研究費の一部を次年度に使用することとなった。従って、未実施の検討項目を平成24年度に実施する際には、次年度に繰り越した分の助成金を充て実施する。また、平成24年度に計画されていた実施項目については、予定通り平成24年度に配分される助成金により実施する。
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