研究課題/領域番号 |
23590174
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
深見 達基 金沢大学, 薬学系, 助教 (00532300)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アシルグルクロナイド / 加水分解酵素 / 薬物毒性 |
研究概要 |
カルボン酸を有する薬は生体内でグルクロン酸抱合を受けることが多い。しかしこの抱合体(アシルグルクロナイド)は肝障害を始めとする様々な障害を引き起こすことが報告されている。よって抱合体を親化合物へ戻す反応(加水分解反応)は生体にとって解毒的に働くことが考えられるが、未だその反応を担う酵素は未解明である。本年度は毒性への関与が報告されている免疫抑制薬のミコフェノール酸のアシルグルクロナイド(AcMPAG)を加水分解する酵素の同定を目的とした。AcMPAG加水分解酵素活性が認められたヒト肝臓サイトゾルより硫安分画、イオンクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、ゲル濾過クロマトグラフィーを組み合わせることにより、タンパク精製を行った。その結果、α/β hydrolase domain containing 10 (ABHD10)がAcMPAG加水分解酵素として単離された。ABHD10発現系を作製し、AcMPAG加水分解酵素活性の速度論的解析を行った結果、ヒト肝臓ホモジネートを酵素源とした際に得られたKm値と同程度の値が得られた。様々な加水分解酵素阻害剤を用いてABHD10発現系とヒト肝臓試料間で阻害強度を比較した際も類似した結果が得られた。以上より、ヒト肝臓においてABHD10がAcMPAG加水分解を担う主酵素であることを明らかにした。ミコフェノール酸からAcMPAGの生成酵素活性にABHD10が影響するか検討するために、ABHD10阻害剤PMSFを反応液に添加してヒト肝臓ホモジネートにおけるAcMPAG生成酵素活性を測定した結果、1.7倍の固有クリアランスの上昇が認められた。このようにABHD10はアシルグルクロナイド生成に影響することも明らかにした。ABHD10の機能は今まで全く知られていなかったが、本検討によりABHD10の薬物代謝における役割を初めて明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に提示した初年度の目的(アシルグルクロナイドを加水分解する酵素の同定)が今年度中に達成された。また、本内容が国際学術誌Journal of Biological Chemistry (Impact factor: 5.328)に受理された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度ではアシルグルクロナイドを加水分解する酵素としてABHD10の単離に成功した。しかし、ABHD10がすべての薬物のアシルグルクロナイドを加水分解するとは限らない。そこで、ヒトABHD10の基質特異性について検討をする必要がある。また、他の薬物についてもABHD10のアシルグルクロン酸抱合体生成反応に与える影響を解析する。また、アシルグルクロナイドの加水分解反応にABHD10以外の酵素も関与する可能性についても考える必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
ABHD10の基質特異性を解析するためにアシルグルクロナイドを生成する様々な薬物およびそのアシルグルクロナイドを購入する。また、アシルグルクロナイドの細胞毒性を解析するためにアシルグルクロナイド生成に関与するUDP glucuronosyltransferaseとABHD10の共発現系を構築する必要がある。その発現プラスミド構築材料費や細胞培養関係費にもあてる。アシルグルクロナイドは細胞に作用した後、インターロイキンやケモカインを産生することが知られているため、それらを検出するキットの購入費にもあてる。
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