研究課題/領域番号 |
23590174
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
深見 達基 金沢大学, 薬学系, 助教 (00532300)
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キーワード | アシルグルクロナイド / 加水分解酵素 / 薬物毒性 / ABHD10 |
研究概要 |
カルボン酸を有する薬は生体内でグルクロン酸抱合を受けることが多い。しかしこの抱合体(アシルグルクロナイド)は肝障害を始めとする様々な障害を引き起こすことが報告されている。よって抱合体を親化合物へ戻す反応(加水分解反応)は生体にとって解毒的に働くことが考えられる。申請者は昨年度、毒性への関与が報告されている免疫抑制薬のミコフェノール酸のアシルグルクロナイドを加水分解する酵素を同定し、α/β hydrolase domain containing 10 (ABHD10)を単離した。そこで、ABHD10の基質特異性を調べることを目的として、毒性への関与が報告されている様々なアシルグルクロナイドを基質として用いてABHD10発現系による加水分解酵素活性を測定した。その結果、ジクロフェナク、トルメチンおよびプロべネシドなどの薬物のアシルグルクロナイドを加水分解するのに対し、イブプロフェン、ケトプロフェンおよびナプロキセンなどの薬物のアシルグルクロナイドの加水分解は触媒しなかった。このように、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の中では、酢酸系NSAIDsのグルクロナイドを基質とする傾向が認められた。さらに、トルメチンおよびプロベネシドに関して、アシルグルクロナイド生成酵素活性にABHD10が影響するか検討するために、ABHD10阻害剤PMSFを反応液に添加してヒト肝臓ホモジネートにおけるアシルグルクロナイド生成酵素活性を測定した結果、1.5から1.7倍の固有クリアランスの上昇が認められた。このようにABHD10はトルメチンおよびプロベネシドのアシルグルクロナイド生成に影響することも明らかにした。以上、ABHD10はミコフェノール酸のみならず、多くの薬物のアシルグルクロナイドを加水分解することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の当初の目的は「アシルグルクロナイド加水分解酵素の基質特異性」について解明するものであった。本研究でアシルグルクロナイド加水分解酵素として同定されたABHD10は酢酸系NSAIDsのアシルグルクロナイドに対して親和性を示し、プロピオン系NSAIDsのアシルグルクロナイドに対しては加水分解触媒能を示さないことを明らかにした。この知見を得たことで、当初の目的を達成できたものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにABHD10についてアシルグルクロナイド加水分解に関する機能解析を行ってきた。しかし、いずれもin vitroにおいて解析されたものであるため、in vivoにおいてもABHD10が機能するかどうか不明である。そこで、げっ歯類(ラットまたはマウス)を用いて、実際にABHD10が体内のアシルグルクロナイド濃度に影響を与えるかどうか、解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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