研究課題/領域番号 |
23590175
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
白坂 善之 金沢大学, 薬学系, 助教 (60453833)
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研究分担者 |
玉井 郁巳 金沢大学, 薬学系, 教授 (20155237)
中西 猛夫 金沢大学, 薬学系, 准教授 (30541742)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 薬学 / 薬物動態学 / 経口吸収 / 徐放性製剤 / トランスポーター / 代謝酵素 / 薬物間相互作用 / 生体分子 |
研究概要 |
平成23年度における研究では、モデル化合物としてpravastatinおよびpitavastatinを用い、トランスポーターを介したラット消化管吸収動態に関する詳細な検討を行った。まず、Oatp1a5発現oocyteを用いた検討により、pravastatin及びpitavastatinがOatp1a5の基質となることが示された。また、それらの輸送はOatp阻害剤であるnaringinにより阻害され、IC50値はそれぞれ30.4uMおよび18.5uMと算出された。次に、1000 uM naringinによる、両薬物のラット小腸膜透過性を評価した。その結果、pravastatinの膜透過性はnaringinにより有意に低下したが、pitavastatinの膜透過性は有意に上昇した。経口投与後におけるAUCも同様な変動傾向が観察されたことから、pravastatin吸収にはOatpが、pitavastatin吸収にはOatpに加え排泄型トランスポーターが関与している可能性が推察された。LLC-PK1/Mdr1a細胞を用いた検討により、pitavastatinがMdr1aの基質となることが示された。また、その輸送はnaringinにより阻害され、IC50値は541uMと算出された。ここで、Oatp1a5およびMdr1aを介したpitavastatin輸送に対するIC50値に着目した場合、200uM naringinがOatp1a5のみを効率的に阻害する可能性が考えられる。実際に、pitavastatinの小腸膜透過性は、200uM naringin存在下で有意に低下し、pitavastatin吸収におけるOatp1a5の関与が改めて示唆された。以上、本研究より、pravastatinおよびpitavastatinのラット消化管吸収にOatpが関与している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラット十二指腸、空腸、回腸、大腸を用いたin situ吸収実験 (closed loop法 [滞留法]あるいはsingle-pass perfusion法 [単回灌流法])を行った研究内容そのものに関しては、おおむね順調に進展しているが、着目し使用したモデル薬物の数が予定より少ない。これは、本年度に着目した薬物の消化管吸収動態解析およびその規定因子の同定が予想以上に困難であり、長く時間を費やしてしまったことに起因している。しかしながら、これらの研究結果は今後の部位差研究の根本になるため、吸収部位差を有する化合物を揃えることが望ましい。したがって、今後も必要に応じてモデル薬物を追加する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度と同様に、ラット十二指腸、空腸、回腸、大腸(十二指腸5cm、その他各10 cm)を用いたin situ吸収実験 (closed loop法 [滞留法]あるいはsingle-pass perfusion法 [単回灌流法])を、モデル薬物をさらに追加する形式で行う。これと並行して、各機能タンパク質の選択的阻害剤を用い消化管各部位におけるin situ阻害試験を行い、モデル薬物の吸収部位差に起因する原因トランスポーターおよび代謝酵素を同定する。また、薬物の吸収部位差を引き起こす原因トランスポーターおよび代謝酵素の発現量および発現部位特性を定量する。こららの結果を速度論的に解析し、各モデル薬物の吸収部位差とトランスポーターおよび代謝酵素活性との相関・整合性を検討する。特に、原因分子として顕著なものを定量的に明白にする。さらに、以上で得られた結果に基づいて、薬物吸収および吸収部位差に影響するトランスポーターおよび代謝酵素として同定された主要原因分子のクローニングを行う。ただし、実際の評価システムに導入するトランスポーターおよび代謝酵素はヒト由来のものも含むことに留意する。対応するヒト分子種を十分に考察・推察しながら遂行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度に検討を行った動物実験において、使用(着目)したモデル薬物数が当初の予定より少なくなってしまい、検討に遅れが生じている。そのため、24年度においても引き続き大規模な動物実験が必要であり、ラット、マウスおよびアフリカツメガエルを中心に購入の必要がある。また、得られた薬物サンプルの定量測定に際しては、常にLC/MS/MSあるいはHPLCを用いるため、大量の定量用試薬が必要である。一方、これらの追加検討を遂行すると共に、24年度の検討項目を予定通りに展開するために、遺伝子単離、遺伝子発現系および培養細胞の利用に対する大量の培養試薬ならびに生化学試薬の購入が必要である。
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