研究課題/領域番号 |
23590176
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中西 猛夫 金沢大学, 薬学系, 准教授 (30541742)
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研究分担者 |
相沢 信 日本大学, 医学部, 教授 (30202443)
玉井 郁巳 金沢大学, 薬学系, 教授 (20155237)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | がん / 幹細胞 / トランスポーター / 化学療法 / 白血病 / 前立腺癌 |
研究概要 |
がん幹細胞は腫瘍形成、細胞増殖、浸潤・転移に重要な役割を果たすため、がん幹細胞を治療標的とした化学療法の開発は急務である。がん幹細胞特異的に発現するSLCトランスポーターの機能調節やそれを利用した薬物送達法の開発は、がん幹細胞標的化の有効な手段となり得る。従って、本研究では、がん幹細胞特異的に発現するトランスポーター遺伝子の同定とその役割を解明することにより新しいがん幹細胞標的化に向けた化学療法の基盤研究を行うことを目的とする。本目的を達成するため、白血病細胞をモデルとして、その幹細胞画分に発現するアミノ酸トランスポーターやその他のSLCトランスポーターの発現解析や機能同定などを提案した。幹細胞の純化および分析には、特別なフローサイトメーター(ソーター機能付き)が必要であり、当初は国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センターとの協力で行う予定であったが、実験の遂行には国立医薬品食品衛生研究所へ頻繁に行き来する必要が生じ、計画通りに進んでいないのが実情である。そこで、金沢大学がん進展制御研究所に設置されている機器が利用可能であると判断されたため、その協力を得て研究を推進できるように手配した。具体的な研究成果としては、癌の増殖に重要なSLCトランスポーターとして、アミノ酸トランスポーター以外にホルモン抱合体を輸送する有機酸トランスポーターがホルモン依存性前立腺癌の増殖に役割を果たすことが判明した(現在論文投稿準備中)。ホルモン枯渇化においてその発現が有意に増加するため、細胞内で代謝され男性ホルモンとして利用される副腎ホルモンの硫酸抱合体の供給調節に重要な役割を果たすと考えられる。 今後は、幹細胞標的化のための化学療法を構築する上で標的候補分子として今後検討に加えていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者らは、がん幹細胞特異的に発現するトランスポーター遺伝子の同定とその役割を解明することによって、新しいがん幹細胞標的化に向けた化学療法の基盤を構築することを研究目的としている。この目的を達成するために、平成23年度は、マウス白血病由来幹細胞において、栄養シグナルに重要なアミノ酸を輸送するトランスポーターが果たす役割とその発現変動を明らかにすることを提案した。しかし、上述したように、幹細胞の調製に必要な実験体制が十分でないために研究の達成度は当初の予定よりも遅れている。また、同時に本申請でがんの増殖に関わるSLCトランスポーターの探索を掲げているが、ホルモン依存性前立腺がん細胞において、有機酸トランスポーター(OATP)がその候補として浮上したことは大きな収穫である。
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今後の研究の推進方策 |
当初、本研究では、がん幹細胞の研究が最も進んでいる白血病をモデルとして、1)SP細胞や幹細胞マーカーを指標に純化される細胞分画においてアミノ酸トランスポーターの役割解明、2)幹細胞増殖に関わるSLCトランスポーターの探索を提案した。今後は金沢大学がん進展制御研究所に設置されている機器を利用し、 幹細胞様細胞を分画して、研究を推進する。当初は、白血病細胞をモデルとして提案したが、研究代表者らがH23年度に行った前立腺がんにおける予備的検討や過去に報告されている前立腺癌由来幹細胞マーカーに関する情報を考慮して、今後はホルモン依存性前立腺癌細胞についても、研究対象として実験を遂行する予定である。さらに幹細胞様細胞画分としてSP細胞を対象とするが、その同定が困難な場合はその他の適切なマーカーを使用して幹細胞の純化・分画を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述したように、研究実施体制が十分でなかったため研究が遅延し、繰越金が発生した。従って、昨年度の未支出額(繰越金)は主に幹細胞解析用試薬の購入に充填し、研究を遂行する。各項目の内訳の予定については、物品費(1755千円)、旅費(225千円)、謝金およびその他(100千円)とする。物品費の内訳については、細胞培養用試薬(300千円)、実験動物(200千円)、生化学用試薬(400千円)、マイクロアレイ関連試薬(300千円)、および幹細胞解析用試薬(555千円)とする。
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