研究課題/領域番号 |
23590176
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中西 猛夫 金沢大学, 薬学系, 准教授 (30541742)
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研究分担者 |
相沢 信 日本大学, 医学部, 教授 (30202443)
玉井 郁巳 金沢大学, 薬学系, 教授 (20155237)
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キーワード | トランスポーター / 前立腺癌 / がん / 幹細胞 / 化学療法 / 白血病 |
研究概要 |
がん幹細胞は腫瘍形成、細胞増殖、浸潤・転移に重要な役割を果たすため、がん幹細胞を治療標的とした化学療法の開発は急務である。がん幹細胞特異的に発現するSLCトランスポーターの機能調節やそれを利用した薬物送達法の開発は、がん幹細胞標的化の有効な手段となり得る。従って、本研究では、がん幹細胞特異的に発現するトランスポーター遺伝子の同定とその役割を解明することにより新しいがん幹細胞標的化を志向した化学療法の基盤研究を行うことを目的とする。白血病細胞をモデルとして、その幹細胞画分に発現するアミノ酸トランスポーターやその他のSLCトランスポーターの発現解析や機能同定などを提案した。幹細胞の純化および分析には、特別なフローサイトメーター(ソーター機能付き)が必要であり、当初は国立医薬品食品衛生研究所安全性生物 試験研究センターとの協力で行う予定であったが、実験の遂行には国立医薬品食品衛生研究所へ頻繁に行き来する必要が生じ、計画通りに進んでいないのが実情である。一方で、本申請でがんの増殖に関わるSLCトランスポーターの探索を掲げているおり、ホルモン依存性前立腺癌細胞において、有機酸トランスポーター(OATP)がアンドロゲン枯渇下で発現が増加し、OATPの基質である抱合型アンドロゲンの輸送が顕著に増加することから、去勢抵抗性細胞増殖にOATPが関わることを発見し報告した。前立腺癌細胞の転移や再発と去勢抵抗性とは密接な関係があるため、本発見は幹細胞標的化のための化学療法を構築する上で重要な示唆を与える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者らは、マウス白血病由来幹細胞において、栄養シグナルに重要なアミノ酸を輸送するトランスポーターが果たす役割とその発現変動を明らかにすることを提案した。しかし、上述したように、幹細胞の調製に必要な実験体制が十分でないために研究の達成度は当初の予定よりも遅れていた。しかし、がんの増殖に関わるSLCトランスポーターとしてホルモン依存性前立腺癌細胞において、有機酸トランスポーター(OATP)を同定できたことから、今後腫瘍形成能を有するOATP分子の役割解明が進み、当初の目的が達成されると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は金沢大学がん進展制御研究所に設置されている機器を利用し、前立腺癌の腫瘍形成能とOATP分子の関係について研究を展開する。前立腺癌幹細胞におけるOATP分子の発現についても、研究対象として実験を遂行し、当初の予定通り癌幹細胞におけるSLC輸送体の標的としての意義を明確化する。前立腺癌幹細胞分画にはSP以外にも様々な抗原マーカーが使用可能であり、本学の施設によっても十分に検討出き、研究をさらに推進が出来ると考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の未支出額(231,928円)は主に幹細胞解析用試薬として幹細胞マーカー定量試薬(抗体など、単価約50,000 x 4個)の高価な生化学試薬の購入に充填する。
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