研究課題/領域番号 |
23590178
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
花輪 剛久 山梨大学, 医学部附属病院, 准教授 (00302571)
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研究分担者 |
小口 敏夫 山梨大学, 医学部附属病院, 教授 (30169255)
飯嶋 哲也 山梨大学, 医学部附属病院, 講師 (70324209)
田口 光正 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 環境・産業応用量子ビーム技術研究ユニット, 研究員 (60343943)
廣木 章博 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 環境・産業応用量子ビーム技術研究ユニット, 研究員 (10370462)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ハイドロゲル / 末梢神経障害 / ガンマ線 / ポリエチレンオキサイド / カラギーナン |
研究概要 |
抗がん剤投与により引き起こされる末梢神経障害には対症療法としてケタミン、ガバペンチン、サルポグレラートなどを経口投与するが、これらの医薬品は苦味・不快味を有し、患者の医薬品服用への意欲を低下させる原因となっており、経口投与に替わる投与形態が望まれている。 本研究で研究代表者は皮膚貼付型製剤の開発を目的として、増粘多糖類であるイオタカラギーナン(ι-CG)と熱可塑性水溶性高分子であるポリエチレンオキサイド(PEO)を種々の比率で混合した溶液にガンマ線を照射し、ハイドロゲルの調製を試み、得られた試料の物理化学的性質について検討した。 PEOとιーCGの混合物にガンマ線を照射することにより全質均等なハイドロゲルを形成することが明らかになった。ハイドロゲルの強度をクリープメーターにより評価したところ、ガンマ線照射量の増加に伴い高い値を示し、ガンマ線がPEO分子鎖間を強固に架橋するものと考えられた。一方、ZnCl2添加量の増加に伴いゲル強度は低下した。 「ハイドロゲルを一端乾燥してキセロゲルとし、再度水分を吸収させる」ことを繰り返し、ハイドロゲルの吸水膨潤挙動を検討したところ、低い照射線量のハイドロゲルは高い吸水能を有することが明らかになった。 ハイドロゲルからのZnCl2の放出挙動を検討したところ、ZnCl2添加量およびガンマ線照射量に依存せず、同様な放出挙動を示した。 PEOとι-CG混合物のガンマ線照射によるハイドロゲル形成は本研究により初めて見出された現象で有り、さらに種々の水溶性高分子を組み合わせることにより新しい機能を有するハイドロゲル形成が期待できる。また、乾燥ー吸水膨潤挙動の検討より、末梢性神経障害の治療に用いられる医薬品を実際にハイドロゲルに導入する際の基礎データを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PEOとι-CG混合物のガンマ線照射によるハイドロゲル形成は本研究により初めて見出された現象で有り、さらに種々の水溶性高分子を組み合わせることにより新しい機能を有するハイドロゲル形成が期待できる。今年度はモデル薬物としてガンマ線照射前からZnCl2を含有させたが、ハイドロゲルの吸水膨潤挙動の検討から、ハイドロゲル形成後に医薬品を導入可能であることが示唆されたことから、本課題の目的である末梢神経障害の治療に使用される医薬品を実際に導入したハイドロゲルの調製および物性検討を行う基礎データが得られたという点で概ね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
【ハイドロゲルへの医薬品の導入】本研究でハイドロゲル中に導入しようと考えているケタミン(KET)、ガバペンチン(GBP)は水に溶けやすいが、塩酸サルポグレラート(SPG)の溶解度は0.012g/mLと低く、また、塩基性領域で加水分解する。そこで、シクロデキストリン(CD)によりSPGの可溶化と安定化を図る。各医薬品水溶液中にハイドロゲルを浸し、ゲル中に医薬品を導入する。ハイドロゲル中の医薬品含有量はハイドロゲル浸漬後,溶液中の残余の医薬品量から算出する。また、周囲のpH変化による膨潤/収縮の有無など、医薬品の共存によるハイドロゲル物性への影響を検討する.【Franz’sセルを用いたゲル中医薬品の皮膚透過性の検討】本課題で調製するハイドロゲルは、皮膚に貼付後、ゲル内部から薬物が放出され、皮膚を透過し、吸収されることを想定している.そこで,再生ヒト表皮モデルを使い、実際に皮膚に貼付した際,ハイドロゲルから薬品がどのように放出され,皮膚に浸透していくのかを考慮した試験を行う.医薬品の皮膚透過を評価する方法としては通常Franz’sセルによる膜透過実験が行われる.本研究では培養により得たヒト再生表皮を購入し、薬物のハイドロゲルからの放出を検討する.【医薬品含有ハイドロゲルの臨床評価】医薬品含有ハイドロゲルの臨床試験について山梨大学医学部倫理委員会に諮り、承認を得る。抗がん剤投与により末梢性神経障害を発症している患者で、本学緩和ケアチームにより治療の必要のありと判断された患者について医薬品含有ハイドロゲルを貼付し、鎮痛効果を評価する。投与にあたり、患者には本臨床試験について十分に説明し、文書による同意が得られた患者に対し、実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
【設備備品】得られたゲルの物性測定に必要なクリープメーターは東京理科大学薬学部(本学)は所有していないため、本研究補助金の設備備品として購入したいと考えている。【消耗品等】ハイドロゲルからの医薬品の放出挙動を検討するための再生ヒト表皮モデル(ニコダームリサーチ製)の購入、試薬・フィルター類の購入および論文別刷費用に充当する。【旅費等】原子力機構に出向し,実験を行う為の交通費および宿泊費に充当する。
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