研究課題/領域番号 |
23590178
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
花輪 剛久 東京理科大学, 薬学部, 教授 (00302571)
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研究分担者 |
小口 敏夫 山梨大学, 医学部附属病院, 教授 (30169255)
飯嶋 哲也 山梨大学, 医学部附属病院, 講師 (70324209)
田口 光正 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (60343943)
廣木 章博 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (10370462)
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キーワード | ハイドロゲル / 電子線 / 水溶性高分子 / 緩和医療 |
研究概要 |
本研究は抗がん剤投与により引き起こされる末梢神経障害を緩解する皮膚貼付型ハイドロゲル製剤を水溶性高分子に電子線を照射して得られるハイドロゲルを薬物担体として調製する事を目的としている。 平成24年度は メチルセルロース(MC)、ヒプロメロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を基剤とするハイドロゲルを種々の電子線照射量により調製した。その結果、ゲル分率は照射線量の増加に伴い10kGyで急激に増加し、その後30kGyでほぼ一定となった。これらのゲルの膨潤度を検討したところ、照射線量の増加に伴い減少した。これは照射により橋架け構造が密になり、ゲルの構造もより強固な構造を呈した為と考えられる。 これらハイドロゲルのゲル強度を平成24年度に物品として購入したレオメーターを用いて測定したところ、上記物性を反映し、照射量の多い、ゲルはより高い破断強度を示した。 照射線量の低いハイドロゲルはそのままでは流動性が高く、取り扱いにくい性状を呈したが、袋状のメッシュ内に導入する事により漏出も観察されなくなり、高い吸水膨潤挙動を示した。一方、照射線量の高いハイドロゲルは吸水膨潤能には限界が観察されたが、そのまま手で取り扱いが可能であった。 これらの結果から、照射量の高低に応じて得られる物性を利用し、患部の様々な状況において利用可能な性状を呈する事ができるものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度試作したポリエチレンオキサイド-ι-カラギーナン混合物からなるハイドロゲルは(吸水膨潤-乾燥)実験を繰り返すと未半応のιーカラギーナンが流失す事が明らかになり、新たな水溶性高分子の探索が必要となったが、本年度はMC、HPMC、HPCなどの水溶性高分子でハイドロゲルが形成される事が明らかになり、ジエンンドに置ける薬品の導入に向けての基礎データを得る事ができたという点で「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
【ハイドロゲルへの医薬品の導入】本研究では当初ケタミン、ガバペンチンなどをハイドロゲル中に導入する予定であったが、近年、塩酸サルポグレラート(SPG)、トラマドールなど、末梢神経障害改善効果、鎮痛効果が高い医薬品が着目されている。そこで、本年度はこれらの医薬品のハイドロゲル中への導入を検討し、in vitro における放出挙動について検討する。 【Franz'sセルを用いたゲル中医薬品の皮膚透過性の検討】上記で得られた医薬品含有ハイドロゲルから放出された医薬品の皮膚透過性を検討する為、ヒト再生表皮を購入し、薬物のハイドロゲルからの放出を検討する。 【医薬品含有ハイドロゲルの臨床評価】医薬品含有ハイドロゲルの臨床応用について山梨大学医学部倫理委員会に諮り、承認を得る.抗がん剤投与により末梢神経障害を発症している患者で、山梨大学緩和ケアチームにより治療の必要ありと診断された患者について、医薬品含有ハイドロゲルを貼付し、鎮痛効果を評価する。投与にあたり、患者には本臨床試験について充分に説明し、文書による同意が得られた患者に対して実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
【消耗品等】ハイドロゲルからの医薬品の放出挙動を検討する為の再生ヒト表皮モデル(ニコダーム リサーチ製)の購入、試薬・フィルター類の購入に充てたいと考えている。 【旅費等】得られた結果を学会発表し、また、論文化する為の費用に充てる。
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