研究課題/領域番号 |
23590180
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
奥田 真弘 三重大学, 医学部附属病院, 教授 (70252426)
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研究分担者 |
岩本 卓也 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (30447867)
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キーワード | メトトレキサート / 有機アニオントランスポータ / サイトカイン / リポポリサッカライド / 腎尿細管 / 腎クリアランス / 尿細管分泌 / 炎症 |
研究概要 |
炎症時におけるメトトレキサート(MTX)の腎排泄挙動変動とその要因解明を目的とし、LPS投与ラットをモデルとした検討を行った。 Wistar系雄性ラット(9週齢)にLPS(4 mg/kg)を腹腔内投与し、炎症モデルラットを作製した。MTX全身クリアランス(CL)実験では、大腿静脈からMTX(5 mg/kg)を瞬時投与後、大腿動脈から経時的に採血し、血漿中のMTX量を2-コンパートメントモデルで解析した。In vivo 腎CL実験では、MTXを瞬時投与(86 µg/kg)及び持続注入(134.2 µg/hr)後、採取した血液及び尿検体に加え、実験後に摘出した腎組織を用いた。Western Blot分析は、摘出腎から粗膜画分を調製し有機アニオントランスポータ(rOAT1、rOAT3、rMRP4)の特異抗体を用いて行った。免疫染色は、4%PFAで灌流固定したラット腎臓を用い、Alexa594標識二次抗体を用いて行った。 MTXの全身CL実験の結果、LPSラットではMTXの血中濃度-時間曲線下面積(AUC)が約2倍まで上昇、全身CLは約1/2まで減少した。中心コンパートメントからのMTX消失速度は、LPSラット有意に減少したが、分布容積は変化しなかった。MTXの腎CLは、LPSラット顕著に減少し、その主な要因として糸球体ろ過速度および尿細管分泌速度の低下(それぞれ約1/8及び約1/17まで減少)が明らかになった。腎粗膜画分におけるrOAT1、rOAT3、rMRP4発現量は、LPSラットでそれぞれ53%、70%、85%まで減少したが、免疫染色の予備検討では、LPSラットではMRP4の刷子縁膜局在が拡散傾向にあった。 以上から、LPS投与ラットではMTXの腎CLが顕著に減少し、その原因として糸球体ろ過の低下に加え、有機アニオントランスポータの低下の関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は、炎症性疾患モデルラット(LPSラット)から調製した腎スライスを用いた免疫組織学的及び薬物動態学的解析、並びに培養上皮細胞及び単離浮遊尿細管を用いた薬物輸送、並びに薬物トランスポータの発現・機能変動解析を実施する予定になっていた。 実際に、免疫染色による組織学的解析については、パラホルムアルデヒドを用いた灌流固定腎を用い、抗rMRP4抗体を用いた予備的検討を実施し、LPS処置によるrMRP4の局在変動に関する知見を得ることができた。しかしながら、ラット腎スライスを用いた3H-メトトレキサートの輸送実験やトシリズマブ、エタネルセプト等を用いた検討は実施できていない。 その主な原因は、実験を担当する大学院生が社会人1年生となり、実務修得にかかる負担と研究遂行の両立が困難であったことが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、研究を担当する大学院生が2年目を迎えるため、平成24年度に比べ、研究遂行にかかるエフォート確保が容易になることが予想される。また、研究の指導体制を強化する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画の遂行に必要な消耗品及び旅費に研究費を充当する。具体的には、ラット腎スライス及び培養細胞系を用いた薬物輸送実験のため、実験動物、培養器具(ディッシュ、ピペット)、培養液、サイトカイン関連薬物等の購入を行う。さらに、研究成果の発表と資料収集のため、本学から学会会場までの旅費を支出する。
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