Gentamicin(GM)やamikacinなどのアミノグリコシド系抗生物質は、腎近位尿細管上皮細胞の管腔側からエンドサイトーシスによって取り込まれることが知られている。その取り込みにはmegalinと呼ばれるエンドサイトーシスレセプターが関与することを我々のグループなどによって示されてきた。一方、近年、内耳細胞などにおいてTRPチャネルを介したGMの細胞内移行に関する報告が散見されていた。そこで、我々は、エンドサイトーシス非依存的なGMの細胞内移行についてさらに解析を進めることを目的に、培養腎尿細管上皮細胞におけるGM輸送におけるカチオンチャネルの関与について検討を行った。 Gadolinium(Gd)はTRPチャネル阻害剤として用いられるが、ある濃度域ではTRPV1を活性化することも報告されている。そこで、megalin発現がほとんど観察されないヒト腎近位尿細管由来HK-2細胞における[3H]GM取り込みに及ぼすGdの影響について検討した結果、低濃度Gd共存下では上昇し、高濃度Gd共存下では阻害された。また、megalinが発現しているOK細胞においても、HK-2細胞の場合と同様に、Gd共存によって[3H]GM取り込みは二相性に変化した。また、HK-2細胞をGdで前処理した後に取り込み実験を行った結果、[3H]GM取り込みはGd前処理濃度依存的に上昇したが、Gd共存時に認められた高濃度Gdによる阻害効果は観察されなかった。一方、Gd前処理によって促進された[3H]GM取り込みは、非選択的カチオンチャネル阻害剤ruthenium redによってほぼ完全に阻害された。以上、Gdはmegalinの発現に依存することなくGM取り込みに影響するとともに、その処理条件に応じてGM取り込みを活性化あるいは直接的に阻害することが示された。
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