研究課題/領域番号 |
23590185
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
山内 あい子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (30122253)
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研究分担者 |
佐藤 陽一 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (10363160)
坂本 久美子 徳島大学, 大学病院, 薬剤師 (80403749)
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キーワード | 医薬品安全性情報 / データマイニング / ヒト毒性予測 |
研究概要 |
平成24年度は初年度の研究成果を基にさらに検討を進め、以下の研究実績を得た。 1. 医薬品情報の収集とin silicoデータマイニングによる薬物のヒト安全性予測モデルの構築:医療用医薬品の副作用情報と化学構造や物理化学的性質に関する情報を収載した独自のデータベース(DB)の充実化を図るべく、基盤整備を継続している。また、学内LANのセキュリティ更新に合わせてサーバー等の情報管理体制を整えた。初年度に構築した薬物の乳汁移行性(M/P比)と胎盤移行性(F/M比)に関するクリニカルQSAR式を検証し、臨床で妊婦に使用される全医薬品のF/M比の算出を行った。また、医薬品のヒトにおける4種の毒性情報(胎児毒性、肝毒性、腎毒性および発癌性)から、薬物を毒性の有無によって2群に分類した後、サポートベクターマシン(SVM)による情報科学的な毒性発現予測を実施した。このうち薬物の肝毒性と腎毒性予測に関する研究成果を学会発表し、さらに、SVMの予測精度向上を目指した検討を重ね、multi-SVM化を目指している。 2.In vitro薬物胎盤通過性実験によるQSARモデル式の妥当性に関する検証:薬物のヒト胎盤通過性に関するクリニカルQSAR 解析理論をin vitroモデル実験にて検証する目的で、ヒト胎盤絨毛由来のJEG-3細胞単層培養系を確立した。妊娠母体環境に似た培養液条件下で、apical側からbasal側への種々薬物の単層細胞通過係数を算出することで、ヒトF/M 比に対応する薬物のヒト胎盤通過特性を再現することができたので、研究成果を学会で発表した。 3.薬剤師による医薬品情報提供活動に必要な医薬品安全性情報の調査:徳島大学病院における妊婦・授乳婦への医薬品安全性情報提供活動で漢方製剤の使用についての問合せが多いことから、妊婦・授乳婦の漢方薬治療に関する安全性情報DBを構築し発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
医薬品情報の収集とin silicoデータマイニングによる薬物のヒト安全性予測モデルの構築に関連して、医療用医薬品の副作用情報(胎児毒性、肝毒性、腎毒性、発癌性)と薬物の物理化学的性質に関する情報を収載したDBの構築が進んでおり、当初の計画になかった新たなパラメータとして各薬物の代謝酵素に関する情報も追加している。DB情報をもとに、薬物のヒトにおける4種類の毒性の有無を予測するためのSVMモデルの構築と検証が順調に進んでおり、現在、multi-SVM分類システムによる未知化合物のヒト毒性に関する統合的解析予測にむけた検討を行っている。ヒトにおける薬物の乳汁移行性と胎盤通過性予測に関しては、有意なQSAR解析式が導かれ、この式から臨床で妊婦に使用される全薬物についてF/M比の予測値を算出した。また、ヒトのデータを使ったQSARモデル式の妥当性を検証する目的で実施しているヒト胎盤絨毛細胞を用いたin vitro薬物胎盤通過性実験では、妊娠母体に似た培養条件を用いることにより、ヒトにおける薬物胎盤通過性の特徴を再現することに成功している。さらに、徳島大学病院薬剤師とともに、特に、臨床での妊婦・授乳婦への医薬品情報提供活動において、漢方薬の安全性情報についての質問が多いことに注目し、妊婦・授乳婦の漢方薬治療に関する安全性情報DBを構築し、医療関係者や製薬企業から注目されているところである。 このように、研究実施計画に通りにおおむね順調に研究が進み、各項目の到達目標が達成されつつある。さらに、臨床のニーズに応えて漢方薬に関する安全性情報DBを構築したこと、および、情報化学的手法に加えて、メタ解析等の統計手法を導入した検討も進んでおり、当初の計画以上に医薬品情報学的研究が進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討から、データマイニング技術を用いて医薬品のヒトでの安全性を予測し得るかどうかという課題に関する研究結果を取りまとめ、学会および学会誌への成果発表を行う。さらに、徳島大学病院における薬剤師による医薬品安全性情報提供活動において研究成果の利用を促進するとともに、研究室のホームページより漢方薬を含む医薬品安全性情報DBなどを公開する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
①当該研究費が生じた状況 以下に挙げる理由により、研究費(437,635円)を次年度に繰越すことになった。 (1) 臨床での医薬品安全性情報の収集・解析・提供のために使用するノートパソコン1台を当初予算で購入予定であったが、病院よりi-Padが支給されたため購入しなかった。 ②翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画 平成24年度研究費の繰越分は、平成25年度の研究助成費と合わせて、消耗品の購入および成果発表のための経費として有効に使用する予定である。
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