研究課題/領域番号 |
23590186
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
廣田 豪 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (80423573)
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キーワード | オーダーメード医療 |
研究概要 |
前年度までに、miR-328が細胞分泌exosomeより検出できることを確認している。今年度は、ヒト末梢血を用いた臓器特異的miRNA定量について定量方法の確立を目指した。ヒト結腸腺癌由来LS123細胞において、腸管上皮特異的膜タンパクであるA33抗原を用いた免疫沈降により腸管由来exosomeを分取できexosomeに含まれるmiR-328を定量できた。ヒト血液中からもヒト腸由来exosomeを分取することでヒト腸におけるmiR-328発現量を定量できることを示唆する結果を得た。また、miR-328発現に個体間変動をもたらす要因について検討した結果、miR-328 5’上流域上のCpG islandの一部の領域のDNAメチル化が発現量の変動に重要な役割を果たし、miR-328発現量が高い検体では低メチル化状態、発現量が低い検体では高メチル化状態であった。興味深いことにmiR-328 5’上流域のメチル化状態とmiR-328により抑制的に制御される薬物トランスポーターABCG2との間に有意な相関が認められた。以上のことから、ヒト末梢血から小腸由来exosomeを分取しmiR-328発現量またはmiR-328 5’上流域のメチル化測定することによりヒト小腸におけるABCG2機能を予測できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は最終的な研究計画である患者臨床試験に向けた基礎的な検討を行った。研究実績の概要にあるとおり、患者臨床試験に向けて血液中exosomeを用いたmiR-328の薬物トランスポーターABCG2機能予測バイオマーカーとしての確立を行った。ヒト血液中から定量可能レベルの小腸由来miR-328を得ることが出来たことから来年度以降の研究の推進に支障はなく、達成度としておおむね順調に推移していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」に記述したように、これまでにヒト末梢血から小腸由来exosomeを分取しmiR-328発現量またはmiR-328 5’上流域のメチル化測定することによりヒト小腸におけるABCG2機能を予測できることが示唆される結果を得ている。次年度以降にこれまでの研究結果を踏まえ、バイオマーカーとしての有用性の確立に関する検討について主に臨床試験を中心に推進していく。 一方、サプリメントとして繁用されるクルクミン(ウコンの主成分)はmiRNAの脱メチル化による発現上昇を引き起こすことが報告されている。興味深いことに、クルクミン暴露により内在性ABCG2発現が著しく減少することが報告されている。このことからクルクミンが脱メチル化を介したmiR-328発現上昇を引き起こし、それに伴うABCG2発現低下が生じているのではないかと考えた。 そこで臨床試験ではABCG2遺伝子多型診断を行い遺伝子型を同定した被験者についてクルクミンの前投与を行った上で消化管由来の血中miR-328発現定量ならびにSASP投与(ABCG2の基質薬物)を行い、miR-328発現量とSASPの体内動態を比較検討することを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の設備備品費は当初から計上しておらず特に新規に必要とする機器はないことから、研究費は主に耗品費や国際誌投稿料に充当される計画である。消耗品の使途は主に以下の品目を予定している。 PCR プライマープローブ リアルタイムPCRマスターミックス 細胞small RNA抽出キット DNAメチル化解析キット
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