血漿中microRNA(miRNA)のバイオマーカーとしての妥当性を確認するため、はじめにCaco2細胞を用いてエキソソームの分泌とその方向性を確認した。解析の結果、72時間後をピークとする分泌を確認しその方向はapical方向への分泌が強いものであったが、basal方向への分泌も確認できた。このことは腸から血管方向へのmiR-328の分泌の可能性を示す。また、分泌されたmiR-328はRNase非感受性でり、界面活性剤であるTriton X存在下ではRNase感受であったことから、miR-328はエキソソーム中に存在することによりRNaseに対して安定であったと考えられる。これは、臨床検体を取り扱う上でマーカーとしての安定性が高いことを示唆しており、重要な特徴である。 血中から得られるエキソソームについて臓器特異的なmiR-328発現定量法の確立を目指し、ヒト結腸癌由来細胞を用いて腸管上皮細胞特異的膜タンパク質であるA33抗原を用いたエキソソームの免疫沈降を行った。その結果、小腸特異的に発現するmiRNAを指標とすることでmiR-328の小腸特異的な発現定量が可能であることを示す結果が得られた。 以上の結果を踏まえ、BCRPの基質薬物であるスルファサラジンを用いた臨床試験を行い、血中miRNAのバイオマーカーとしての可能性を検討した。試験に先立ち、被検者についてBCRPの機能に重要な変化を及ぼすことが知られる421C>A変異の遺伝子診断を行った。試験の結果、これまでの報告と同様に421C>A変異によるスルファサラジンのAUCの上昇を認めた。血中のエキソソーム中のmiR-328発現量とスルファサラジンの体内動態との間に関連を認めなかったが、これはA33抗原による分離を経ていないmiR-328発現量であったことから、今後は小腸由来miR-328発現と体内動態との関連を再度解析していく予定である。
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