研究課題/領域番号 |
23590187
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中嶋 幹郎 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00260737)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 薬剤反応性 / 薬剤性肝障害 / 後発医薬品 / ヒト肝細胞キメラマウス / トキシコゲノミクス / 品質試験 |
研究概要 |
本研究の目的は、(1)ヒト肝細胞キメラマウスとトキシコゲノミクスの手技を活用することで、同一薬効成分を有するものの製剤中の添加剤が異なる医薬品をヒトに使用する場合の薬剤性肝障害リスクを予測する評価系を開発すること、ならびに(2)その評価系を用いて、重篤な肝障害の副作用が懸念されている後発医薬品のヒト肝障害の発症リスクに関する情報を精査し、臨床現場で必要とされている後発医薬品の品質に関する実用性の高い安全性情報を発信することである。そのため国内共同研究者である島田卓研究員(フェニックスバイオ)、長塚伸一郎研究員(積水メディカル)ならびに立木秀尚研究員(東和薬品)らと研究チームを組織し、平成23年度は薬剤性肝障害が起こる危険性が高いにもかかわらず、抗リウマチ薬として汎用されているメトトレキサートカプセルの先発・後発医薬品をモデル製剤に選び実験を行った。その結果、ヒト肝細胞キメラマウスへ製剤を投与した群では、製剤を投与していないコントロール群に比べて様々なヒト肝遺伝子群の発現パターンに変化が認められたので、肝毒性イベントの原因ともなる18個の主要な代謝経路のヒト肝遺伝子群に関して製剤間の発現パターン変化を比較したところ、APRとsteatosisを除く16個の代謝経路でほぼ一致したパターン変化を示し、製剤間での有意差は見られなかった。このことから、メトトレキサートカプセルのヒト肝毒性イベント関連遺伝子群の発現変動には同等性が認められた。さらにヒト肝毒性イベントの発症リストが極めて高いHMG-CoA還元酵素阻害薬アトルバスタチン錠の先発・後発医薬品についても同様な実験を行い得られた結果を整理したところ、評価の方法論確立の目途がたった。本手法はヒト臨床試験を行わずに短期間に製剤由来のヒト肝障害の発症リスクを予測できるため、医薬品開発の効率化や倫理面において有益な技術になることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の遂行に当たっては、ヒト肝細胞キメラマウスを用いた被験医薬品のヒト肝遺伝子発現解析が最も重要な実験であるが、平成23年度は研究実施計画に記載したとおりの検討を行うことができたため、「(2)おおむね順調に進展している。」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画どおりに今後も研究を推進していく計画である。しかし万が一当初計画どおりに進まない場合、確実に成果に結びつく研究計画を強力に推進する。また、本研究計画を遂行するための研究体制のなかで、適宜意見交換を行い、本研究計画を効率的に推進していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究計画では、消耗品の実験用動物の購入費用が研究費の大半を占めているが、平成23年度はその購入に別の予算を充てることができたので、研究の推進に支障ない状態で、次年度に使用する予定の研究費が生じた。したがって、今後は当初の計画以上に本研究を進展させることを目標に、次年度の研究費とあわせて使用する計画である。
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