[研究の目的] 現在の臨床においてHelicobactcr pylori (HP) 関連胃MALTリンパ腫の治療にHP除菌が第一選択とされ、7- 8割の奏功率を有しているが、HP感染との関与が明らかではないMALTリンパ腫症例に対して、マクロライド系抗菌薬(MCL)を含む抗菌薬による除菌あるいはMCLs単剤による治療が有効である症例報告や臨床研究が散見される。我々はこれらに注目し、MCLが持つ直接的な抗腫瘍効果の有無を明らかにし、その薬理作用機序を解明することを目的に研究を行う。 [研究の方法] これまで長崎大学病院の臨床症例で生検や手術により得られたMALTリンパ腫の組織の未染標本を用いて、アポトーシス抑制に関与するBcl-xL発現を中心に検討を行った。また、健常人の末梢血液からリンパ球を単離して、14員環MCLとしてクラリスロマイシン(CAM)、15員環MCLとしてアジスロマイシン(AZM)をそれぞれ単独に添加培地でリンパ球を培養し、さらには両MCL添加培地でもリンパ球培養し、24時間後、48時間後において、アポトーシス誘導能およびFas、Fas-ligand、NFkB、Bcl-2、Bcl-xLの発現をフローサイトメトリーを用いて判定した。 [研究の結果]抗Bcl-xL抗体で免疫染色したところ、肺MALT、胃MALTのいずれにおいても除菌あるいはMCL長期投与で改善した症例ではMALTリンパ腫を構成しているリンパ球細胞に陽性である傾向を示した。また、陰性であった症例はMCL投与にも関わらず反応は乏しかった。また、in vitroではCAMおよびAZMにおいて100μg/mLあるいは200μg/mLの単独暴露でリンパ球はアポトーシスが誘導され、また、高濃度の方が高度であった。またCAM100μg/mL+AZM100μg/mLの併用では各単独高用量群と同程度の相乗効果を認めた。
|