研究課題/領域番号 |
23590190
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
武田 泰生 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 教授 (60245462)
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研究分担者 |
池田 龍二 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 准教授 (50398278)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / アミロイド前駆蛋白質 / AICD / 神経分化 |
研究概要 |
【研究目的】アミロイド前駆蛋白質(APP)は神経変性疾患であるアルツハイマー病(AD)の原因遺伝子として知られており、近年、ADの病理的特徴を解明するにはアミロイドβ;(Aβ)の関与のみならず、Aβが産生される過程で同時に産生されるAPP 細胞内部分 APP intracellular domain (AICD) もADの病理的特徴を引き起こす可能性が示唆された。AD患者脳での蓄積も報告されている(Ghosal et al., 2009)。本研究では、AICDの生理的機能の解明を目指し、マウス胚性腫細胞である P19細胞を用いて、神経分化過程における各種分化関連遺伝子の発現との関連を検討した。【対象・方法】 P19細胞にAPP cDNAを導入したAPP安定発現細胞株(P19-APP)を樹立し、APP の発現が P19細胞の神経分化に与える影響及び神経分化関連遺伝子の発現に与える影響をreal-time PCR及び ウェスタンブロットにより検討した。【結果】APPはP19細胞において若干の発現が認められ、レチノイン酸による分化誘導に伴い発現が上昇した。一方、P19-APP細胞では未分化状態において高いAPP発現と神経分化転写制御因子であるPax6の強い発現が認められた。さらに、下流遺伝子の神経分化誘導因子であるFabp7, Tbr2, NeuroDの発現が上昇していた。一方、Ngn1およびNgn2の発現は変化しなかった。【考察および結論】APPはアルツハイマー病発症に関わる原因遺伝子として注目されているが、本研究から、神経発生においても分化制御因子として重要な役割を担っている可能性が指摘された。今後、APP-Pax6シグナル系を詳細に解析し、神経発生のみならずアルツハイマー病発症機構における生理的役割について詳細な検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究計画に基づきAICDの安定発現細胞株の樹立を目指したが、AICDは分子量が非常に小さくウェスタンブロット解析での検出が極めて難しいため、まずはAPPの発現細胞株を樹立し、遺伝子発現に及ぼす影響を検討した。現在、低分子AICDの検出方法の検討を行っている。一方、AICD導入細胞株を用いたマイクロアレイ解析を予定していたが、現段階で細胞株が樹立されておらず、研究の進行は若干遅れぎみである。
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今後の研究の推進方策 |
AICD安定細胞株の樹立ならびにAICD発現の高感度検出法の開発を行う。AICD安定発現細胞株を用いたμアレイ解析を委託し、神経分化ならびにアポトーシス誘導にかかる遺伝子発現について検討する。安定細胞株樹立のための遺伝子導入ならびに細胞培養にかかる費用、マイクロアレイ解析のための費用、シグナル伝達の一環としてチロシンリン酸化抗体を用いた免疫反応一式にかかる費用として研究費を計上する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度予算を購入した際、データシステムへの重複入力による残額(68838円)が生じた。平成24年度には、23年度で予定していたAICD遺伝子導入安定発現P19細胞を樹立し、その細胞株を用いたDNAマイクロアレイ解析を行う予定である。当該残額が、平成24年度予算とともに、DNAアレイ解析のための試薬ならびに外注予算として計上し活用する予定である。
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