研究課題/領域番号 |
23590193
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
菊池 千草 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (20444987)
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研究分担者 |
松永 民秀 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (40209581)
今枝 憲郎 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30347398)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 食後高血糖 / protein kinase C / eNOS / スーパーオキシド |
研究概要 |
持続高血糖モデル動物はStreptozocin (STZ) を Sprague-Dawley (SD) ラットに投与して作製した.血糖値が軽度上昇したモデルの作製を試みたが,安定した結果が得られなかった.投与量と投与時期を検討中である. 食後高血糖モデル動物として自然発症2型糖尿病モデルラットであるOtsuka Long-Evans Tokushima Fatty (OLETF) ラットと,非糖尿病ラットとしてLong-Evans Tokushima Otsuka (LETO) ラットを用い比較した.ブドウ糖負荷試験の結果,OLETFラットはブドウ糖負荷後の高血糖を示していた.化学発光法にて大動脈のスーパーオキシド産生量を測定したところ, OLETFラットにおいてスーパーオキシドの有意な増加が認められた.OLETFラット大動脈におけるスーパーオキシド産生増加はprotein kinase C (PKC)阻害薬により抑制された.PKCの活性化をリン酸化したPKCの蛋白発現量にて測定したところ,OLETFラットではリン酸化したPKC δ 蛋白が減少していた.リン酸化したPKC δの減少はカタラーゼ活性を抑制していた.カタラーゼはPI3K/Aktのリン酸化を介してendothelium nitrc oxide synthase (eNOS) をリン酸化するが,OLETFラットではリン酸化したeNOS蛋白発現量を増加していた.eNOSはBH4が不足するとNOより産生よりもスーパーオキシドを産生する現象をeNOS uncouplingと言う.OLETFラットのスーパーオキシド産生増加はNOS阻害薬,BH4前駆体,PI3K阻害薬により抑制された.以上のことから,食後高血糖時におけるスーパーオキシド産生増加にはPKC δ とeNOS uncouplingの関与が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)持続高血糖および食後高血糖モデル動物の作製と活性酸素産生増加と関連する酵素の解明 持続高血糖モデル動物は軽度の血糖値上昇モデル動物を目標としている.STZの減量と投与時期を早期に変更して検討したが,安定した結果を出すまでに至らず,現在検討中である.食後高血糖モデル動物については順調に遂行している.(2)糖尿病患者の酸化ストレスマーカーと治療薬による影響の解明(疫学的検証) 2型糖尿病であり食後高血糖を発症している患者を選択して,年齢性別等をマッチングさせたコントロール患者として,心血管イベントの発症と治療薬間の相違について検証する予定であったが,現在,計画の段階であり,実行は次年度の予定となった.
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今後の研究の推進方策 |
(1)新規糖尿病薬DPP-4阻害薬の投与と活性酸素増加への効果解明 STZを投与したラットおよびOLETFラットにDPP-4阻害薬を慢性投与する.まず,投与量と投与期間の設定のための予備実験を行い,投与量と投与期間を決定する.動脈を摘出し,スーパーオキシド産生量,NAD(P)Hオキシダーゼ,PKC,eNOSに関して実験を進め,DPP-4阻害薬の食後高血糖是正効果と大血管障害に対する効果を検証し,その機序を解明する.(2)糖尿病患者の酸化ストレスマーカーと治療薬による影響の解明 疫学的検証として,過去の一定期間に名古屋市立大学内分泌糖尿病内科にて入院した2型糖尿病患者を対象とする.2型糖尿病であり,食後高血糖を発症している患者を選択し,コントロール患者は年齢性別等マッチングさせて選択しケースコントロールスタディを行う.診療情報より心血管イベントの発症において,また,治療薬間で差が見られるか検証する.臨床化学的検証として,患者の尿と血液を用いて酸化ストレスマーカーを測定し,食後高血糖の有無,食後高血糖改善薬の効果との関連を検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費として,一般試薬類,各種酵素阻害薬類,薬物投与関連試薬類,動物輸送及び飼育費を使用する. 旅費は研究成果発表の為の旅費を使用する. その他として研究成果投稿料,英文校正料を使用予定である.
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