研究課題/領域番号 |
23590195
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研究機関 | 奥羽大学 |
研究代表者 |
柏木 良友 奥羽大学, 薬学部, 教授 (50204384)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 薬物送達システム / 経皮吸収 / 個別化療法 / 電気信号 / メディカルデバイス |
研究概要 |
電気刺激により放出制御可能なデバイスについては、直接反応により薬物を放出することが可能なデバイスは、デバイス基板電極(金、白金、グラッシーカーボン等)上にナフィオンを被覆した後、表面キャスト法によりカチオン性薬物を静電的相互作用を利用し固定化することにより作製できた。一方、間接電気反応型のデバイスは、放出薬物を対イオンとして持つビピリジニウム塩を置換したピロール誘導体を創製し、電気化学的重合反応によりデバイス基板電極上へ固定化することにより作製できた。また陽電荷をもった薬物と陰電荷をもった高分子を交互に浸漬することにより、デバイス基板電極上に安定に薬物を固定化することができた。特に遺伝子治療を目的として、金電極や金コロイド等のデバイスに自己組織化法により、PEG-PLL-SH、DNA、siRNA等をジスルフィド結合によりデバイス基板電極上に固定できた。 これら作製された何れのデバイス基板電極においても、酸化反応あるいは還元反応を利用した定電位電解法では、印加電位を高電位に設定することにより固定されていた薬物が一気に放出し、低電位に設定することにより固定されている薬物の放出を徐放制御することが可能であった。一方、定電流電解法では印加電流を高電流に設定することにより固定されていた薬物が一気に放出し、低電流に設定することにより固定されている薬物の放出を徐放制御することが可能であった。さらに、設定電流を微小化にすることにより、固定されている薬物の放出開始を遅延化することが可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、(1)電気刺激により応答するインテリジェント・マテリアルの創製と治療薬物の固定法の確立、(2)電気信号による薬物の放出制御の検討、が実施検討項目であった。 (1)については、直接電極反応により薬物放出機能能を有するデバイスの作製、電子移動メディエーターにより薬物放出機能能を有するデバイスの作製、高分子交互累積法によりデバイス基板電極上への治療薬物の固定化を達成することができた。しかしながら、間接電極反応により薬物放出能を有するデバイスの作製は、デバイス基板電極にかなり高い電位を印加しないと薬物放出が見られず、現状ではこのデバイスを使用すると皮膚障害を発症する恐れがあり、現在より低電位の印加で薬物放出が可能なデバイスの作製を検討中である。 作製されたデバイス基板電極の薬物放出能の検討については、酸化反応あるいは還元反応を利用した定電位電解法、定電流電解法の何れにおいても、印加電位、印加電流を高電位、高電流に設定することにより固定されていた薬物が一気に放出し、低電位、低電流に設定することにより固定されている薬物の放出を徐放制御することが可能であった。さらに、設定電流を微小化にすることにより、固定されている薬物の放出開始を遅延化することができたのは予想以上の成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の成果をもとにして、臨床応用可能な経皮投与型イオントフォレーゼシステムの構築と電気刺激的経皮吸収型薬物送達メディカルデバイスを作製する。すなわち、経皮投与型イオントフォレーゼシステムの構築においては、薬物固定デバイス基板電極を薬物理リザーバー電極として、対極槽とつなげて皮膚に貼付し、定電位電解法あるいは定電流電解法により薬物の放出制御を検討する。また、その際に問題になる分極現象による高度な皮膚障害を避けるために、薬物放出部分にアレー状に配したシリコンの無痛針の利用を検討する。 一方、電気刺激的経皮吸収型薬物送達メディカルデバイスの作製においては、経皮投与型イオントフォレーゼと電流検出型バイオセンサであるグルコースセンサを組合せ、血中のグルコース濃度を経時的にモニタリングを行いながら、デバイス基板電極からのインスリンの電気的な放出制御が可能か検討する。さらに、経皮投与型イオントフォレーゼとグルコースセンサとの一元化を図り、センサが治療閾で電流を感知したときに、インスリンを電気的に放出制御させ、コントロールド・リリースのオートメーション化を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度にメディカルデバイスの基本構造を設計し作製できたので、次年度はさらに効率的なメディカルデバイスの作製と、バイオセンサを内蔵したメディカルデバイスの作製に重点を置くため、研究費の中心は消耗品となる。また、研究成果の学会発表旅費および学術雑誌への研究成果投稿料に当てる。
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