研究課題/領域番号 |
23590195
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研究機関 | 奥羽大学 |
研究代表者 |
柏木 良友 奥羽大学, 薬学部, 教授 (50204384)
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キーワード | 個別化薬物療法 / ドラッグ・デリバリー・システム / 経皮吸収 / 電気刺激応答型薬物放出制御 |
研究概要 |
前年度の研究成果をもとに、微弱な電気信号により薬物放出制御が可能な経皮投与型イオントフォトレーゼシステムを構築と電気刺激的経皮吸収型薬物送達メディカルデバイスを作製を検討した。 経皮投与型イオンフォトレーゼシステムとして、放出薬物であるインスリンを固定化した基板電極を薬物リザーバー電極とし、もう一方のリザーバー電極を皮膚からの内因性イオンを抽出可能な生理食塩液で充填した対極槽とし、これら二つのリザーバー電極をつなげて皮膚に貼付し、定電流または定電圧により薬物の放出制御を検討した。その際、皮膚に電流を流すとコンデンサー部分に電気がたまり皮膚は分極し、特に高度の分極では皮膚障害性の引き金となるため、パルス脱分極型のイオントフォトレシス装置を開発することにより、皮膚にたまった電気を生体外に流す工夫を施した。また、薬物放出部分にはアレー状に配したシリコンの無痛針を利用し、薬物放出時における痛みによるストレスを無くすよう配慮した。定電流では印可電位が徐々に上昇し、インスリンの徐放化が確認された。一方、定電圧では設定電圧を制御することにより、インスリン放出の遅延化が確認された。 さらに電気刺激的経皮吸収型薬物送達メディカルデバイスの作製を検討した。インスリンを固定した経皮投与型イオントフォトレシスは、グルコースセンサを組み合わせることにより、血中のグルコース濃度を経時的にモニタリングを行いながら、インスリンを電気的に放出制御させることができた。次いで電気刺激薬物放出システムとグルコースセンサとの一元化を図り、センサが治療閾の電流を感知したときに、インスリンを電気的に放出制御し、コントロールド・リリースのオートメーション化が可能となった。とりわけ糖尿病疾患の患者の血糖値である100~200mg/dLの範囲内できめ細やかな薬物放出を実現でき、個人個人の対応した個別化薬物療法へ対応できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、前年度まず電気信号(電子授受)により薬物放出が可能な薬物固定化材料の創成とその基板電極への固定化方法を確立した。この成果をもとに、本年度は微弱な電気信号により薬物放出制御が可能な経皮吸収型薬物送達システムを構築することができた。さらにこの電気刺激薬物放出システムに電流(電位)検出型バイオセンサ、とりわけ今日生活習慣病として大きな問題となっている糖尿病の治療を目的として、グルコースセンサを組み込み、インスリンのコントロールド・リリースのオートメーション化の可能性した。しかしながら、脂質異常症、痛風などの各疾患の治療を目的として、コレステロールサンサ、尿酸センサ等を組み込み、治療薬物のコントロールド・リリースのオートメーション化の可能性はまだ未検討であり、各疾患を有する患者への適用が可能であることを明らかにしていく必要がある。しかしながら、糖尿病治療用の微弱な電気信号によるインスリン放出制御が可能な経皮吸収型薬物送達システムを構築できたことは、次年度の研究目標であるネットワーク用基地局(パソコン)に送信する近距離無線プロセッサやインターネットを介して治療薬の注入制御を行うプロセッサ等を装備した分析制御部を製作と、薬剤投与の自動化を十分可能にするものである。
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今後の研究の推進方策 |
2年間の研究成果をもとに、僻地患者への対応可能なインテリジェント・メディカルデバイスの製作を検討する。すなわち、薬物放出制御を行うプロセッサ、バイオセンサにより血糖値、コレステロール値、尿酸値を分析処理するプロセッサに、家と病院をつなぐネットワーク用基地局(パソコン)に送信する近距離無線プロセッサやインターネットを介してホームドクターからの指示に従って治療薬の注入制御を行うプロセッサ等を装備したインテリジェント・メディカルデバイスを製作し、臨床応用に試みる。また糖尿病以外の疾患として、脂質異常症、痛風などの各疾患の治療を目的として、コレステロールサンサ、尿酸センサ等を組み込み、治療薬物のコントロールド・リリースのオートメーション化の可能性をも検討し、各疾患を有する患者への適用が可能であることを明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は家と病院をつなぐネットワーク用基地局(パソコン)に送信する近距離無線プロセッサやインターネットを介してホームドクターからの指示に従って治療薬の注入制御を行うプロセッサ等を装備したインテリジェント・メディカルデバイスを製作するため、研究費の大部分は消耗品の購入に当てる。また、得られた研究成果をJournal of Controlled Release、Drug Delivery System等の学術雑誌への投稿を予定しており研究成果投稿料に、さらに、国内旅費は日本DDS学会学術集会、日本薬学会年会等での研究成果発表のための旅費に使用する予定である。
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