研究課題/領域番号 |
23590197
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
関 俊暢 城西大学, 薬学部, 教授 (60196946)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 人工皮膚モデル / 経皮吸収 / タクロリムス / マイクロダイアリシス / 炎症モデル / 培養表皮層 |
研究概要 |
ハイブリット型の人工皮膚モデルの構成要素となる培養表皮層と積層した透析膜にマイクロダイアリシスプローブを挿入した人工真皮について、平成23年度は主に人工真皮層について検討を行った。すなわち、最上層の角質層の仮のモデルとしてシリコーン膜を用い、透析膜とマイクロダイアリシスプローブを積層した人工真皮について、その適切な構成、マイクロダイアリシスプローブの選択、灌流液の組成・速度の決定をおこなった。その結果として、本モデルは、血流の変化の薬物動態への影響を評価するのにはあまり適していないが、マイクロダイアリシスのプローブの膜透過性を変更することで、炎症時に生じる血管透過性の亢進や血漿の組織への移行を再現することができ、皮膚炎症時の薬物動態の変化を調査する上で有用なモデルとなり得ることが確認された。併行して、ラットを用い、タクロリムスの皮膚内動態に影響する皮膚炎症モデルの作成について検討をおこなった。すなわち、ヘアレスラットの自然発症炎症モデルと起炎剤を用いた急性炎症モデルにおいて、皮膚を摘出し、タクロリムスの透過実験を行って炎症時の薬物透過性の変化を、角質層のバリアー能の変化と真皮内の炎症による変化の2つの点から評価した。タクロリムスの皮膚透過は、炎症による角質層の形成不全による透過の亢進だけでなく、痂皮形成による透過の抑制が生じる場合があること、真皮内の変化は透過について主に抑制的にはたらくことなどが明らかとなっている。また、炎症時の薬物の経皮吸収について、フルルビプロフェンをモデル薬物としてin vivoでも検討した結果、炎症により全身への薬物移行が遅延し、その現象は組織に漏出した血漿タンパク質への薬物の結合が原因であることが示させた。培養表皮層については、培養条件の調査など予備的な検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タクロリムスの皮膚透過性と炎症によるその変化について、LM-MS/MSを用いた好感度分析法を確立し、ヘアレスラットの皮膚を用いた実験法を確立している。また、自然発症の炎症、起炎剤を皮下投与することによる炎症、血漿タンパク質を皮内注射することによる模擬炎症について、そのタクロリムス皮膚透過性に及ぼす影響を明らかにしている。また、人工膜を積層し、マイクロダイアリシスのプローブを模擬血管とした実験系についても、フルルビプロフェンをモデル薬物として用い多くの情報が得られている。これらの点については、予定を上回るペースで結果が得られている。一方、ハイブリット型の人工皮膚モデルに用いる培養表皮層については、まだ、条件設定などについての情報を集めいてる段階にあり、当初の予定より遅れている。その理由として、上述のヘアレスラットを用いた実験系で、期待した以上の情報が得られることが分かり、研究を一時的にそちらに集中させてことがあげられる。現時点では、おおむね満足できる結果が得られていることから、遅れている部分についても状況は改善するものと期待している。これらのことから、研究全体としては、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度においては、まず、ケラチノサイトを培養し、表皮層を形成させる条件の確立を優先して行う。また並行して、in vivoでのタクロリムスのヘアレスラットにおける吸収と炎症によるその変化について評価を試みる。合わせて、各種炎症時に組織中に漏出するタンパク質の組成について分析を試みる。これらの検討において、タンパク質の組織からの回収も可能な特殊なマイクロダイアリシスプローブの利用を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
培養細胞の購入、および細胞培養に必要となる消耗品の購入に研究費を充てる。また、ヘアレスラットの購入費用に用いる。また、組織中に漏出するタンパク質の分析に用いる電気泳動に関する材料の購入に研究費を充てる。それらの費用のバランスについては、研究の進捗の状況に応じて修正を行う。
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