研究課題
サリドマイド等の医薬品から生成するヒト反応性代謝物の検出と評価を引き続き行った。ヒトにおける医薬品あるいは候補品の代謝物の安全性評価に関して、ヒト肝を酵素源とするin vitro研究および肝を移植したヒト型モデルマウスを用いたin vivo研究を組み合わせた評価手法を検討し、結果を文献発表した。研究エンドポイントは、培養細胞系およびキメラマウスにおけるグルタチオン等生体内SH化合物との抱合体の高速液体クロマトグラフ-質量分析計(LC-MS/MS)解析であった。本研究では、ヒトにおける医薬品の反応性代謝物を介する毒性発現機構解明を目的に、概ね順調に取り組めた。医療用医薬品の例として、サリドマイドとその一次代謝物を、ヒト肝保有マウスに経口投与し、酸化的代謝によって生じた反応性代謝物をグルタチオン付加体として定量的に検出した。基礎的データとして、ヒト肝細胞をマウス体内で増殖させたのち、酵素源として試験管内におけるサリドマイドの酸化的代謝速度、反応性代謝物とその標的タンパク質について詳細に評価した。生体内でのサリドマイドの挙動に関する情報を得るため、サリドマイドをヒト肝保有マウスとヒト肝非保有マウスにそれぞれ経口投与し、経時的に採血した検体より、サリドマイドの血中濃度推移からみた体内動態の基盤的情報を得た。反応性代謝物の生成機構研究を通して、サリドマイドの新たな毒性学的評価を行った。
2: おおむね順調に進展している
抗がん薬サリドマイドをヒト肝保有マウスとヒト肝非保有マウスにそれぞれ経口投与した際の血中濃度推移あるいは薬物相互作用の結果を毎年のように、アメリカ化学会氏であるChem Res Toxicol誌に論文発表した。その他、学術誌へ原著論文を発表した。著者の論文は以下のデータベースに公開されてる。http://www.researcherid.com/rid/A-6081-2011
米国FDAが定める代謝物の安全性試験に関するガイダンスにおいて、動物よりヒトにおける血漿中濃度が高い代謝物は不均衡性代謝物(Disproportionate drug metabolite)と定義される。サリドマイドの催奇形性の発現には、ヒトと動物では種差が認められている。ヒトに特徴的であり、不均衡性代謝物と判断される血漿中濃度が高い代謝物について、毒性の認められないマウスの場合と対比して詳細に検討する。光学活性サリドマイドあるいは5-水酸化サリドマイドをヒト肝保有マウスに投与し、サリドマイド由来のヒト反応性代謝物の定量的評価をグルタチオン付加体の定量を指標に行う。サリドマイド代謝経路と毒性発現機構との関連を追及する。薬物相互作用の結果も踏まえ、反応性代謝物が結合する生体内タンパク質についての解明についても検討したい。
研究経費の主要部分は、消耗品である。本研究目的から、主たる消耗品はin vitro あるいはin vivo研究の器具、試薬またはヒト肝細胞およびヒト型モデル動物経費である。ヒト肝移植モデル動物の安定的確保のために、実験動物の充足を意識しつつ、研究費を進行する計画である。本年度少額の残が発生したので、最終年度請求額と合わせて執行する。使用計画には特に影響はない。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件)
Regul.Toxicol.Pharmacol
巻: 65 ページ: 316-324
10.1016/j.yrtph.2013.01.008
Chem.Res.Toxicol.
巻: 26 ページ: 486-489
10.1021/tx400008g
Clinica Chimica Acta
巻: 413 ページ: 1675-1677
10.1016/j.cca.2012.05.013
Biochem. Pharmacol.
巻: 84 ページ: 1691-1695
10.1016/j.bcp.2012.09.026
J. Toxicol. Sci
巻: 37 ページ: 1157-1164
10.2131/jts.37.1157