研究課題/領域番号 |
23590202
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
長谷川 弘 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (80218453)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ホモシステイン / メチオニン / メチル基転移 / 安定同位体 / 腎不全 / GC-MS / 13C NMR |
研究概要 |
メチオニンの脱メチル化代謝物であるホモシステインの血漿濃度が基準値よりもわずかに高い状態が持続することは、心血管疾患の危険因子として知られている。ホモシステインは、腎不全患者において蓄積されやすく、透析患者の主要な死因の一つである心血管疾患との関連性が注目されている。本研究は、高ホモシステイン血症をホモシステインの生成と代謝の平衡が崩れている状態と捉え、腎機能低下に伴ってどのような機序で高ホモシステイン血症を呈するかを明らかにしようとするものである。 23年度は、ホモシステインの生成(脱メチル化)能、代謝(再メチル化及びイオウ転移)能を定量評価する方法の構築を目指した。安定同位体標識したメチオニン及びホモシステインを健常ラットにそれぞれ個別に静脈内単回投与後、経時採血して得た血漿中のそれらの濃度をガスクロマトグラフー質量分析計により測定した。代謝様式から考案した解析式と各標識体の血漿中濃度及びenrichmentの時間推移の結果を用い、脱メチル化、再メチル化及びイオウ転移の各代謝回転速度を求めた。その結果、ホモシステインの再メチル化速度は約20 micromol/hr/kg weightであること、メチオニンの約20%がホモシステインを経由して再びメチオニンとして再利用されること等を明らかにした。しかし、脱メチル化及びイオウ転移に関する代謝速度の解析には検討の余地を残した。 片腎摘除ラットに対して標識メチオニン投与を行い、腎実質の減少がメチオニンの再利用に与える影響を検討した。その結果、片腎を摘除してもメチオニンの再利用率は維持されており、メチオニンーホモシステイン代謝サイクルに対し、腎が十分な予備能を有することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
個体を一つのプールとみなし、非定常状態下での解析を進めるため、単回投与による動態解析を行った。しかし、実験結果と解析式の整合性がとれないケースが出来し、予定数以上の投与実験を行った。そのため、もう一つの研究の柱であるNMRを用いた一炭素転移反応の網羅的解析法の開発が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
立案計画に従い、研究を遂行する。ただし、H23年度は標識体を静脈内単回投与し、非定常状態下での動態解析を行ったが、今後はこれに加えて持続静脈内投与による定常状態下での動態解析を行う。定常状態下とすることで、求めるパラメータが減るため、計算結果が収束するものと考えている。健常ラット及び慢性腎不全の病態モデルである3/4腎摘除ラットに安定同位体標識メチオニン及びホモシステインの持続静脈内投与を行い、ホモシステインの生成(脱メチル化)能、代謝(再メチル化及びイオウ転移)能を求める。健常ラット、片腎摘除ラットにおける結果と総合評価し、腎実質の減少に伴う高ホモシステイン血症の成因を明らかにする。 13C標識メチオニンとNMRを用いたメチル基転移反応の解析を培養細胞系により行い、培養条件、試料調製条件及びNMR条件を確立する。細胞の由来臓器によるメチル基転移の差異を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H23年度において、着手が遅れたNMRによるメチル基転移反応の解析に用いる予定であった研究費を、物品費としてH24年度に組み入れて使用する。
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