研究課題/領域番号 |
23590204
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
伊藤 清美 武蔵野大学, 薬学研究所, 教授 (60232435)
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研究分担者 |
工藤 敏之 武蔵野大学, 薬学研究所, 助教 (10584815)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 薬物間相互作用 / トランスポーター / 生理学的薬物速度論 / 定量的予測 |
研究概要 |
臨床での薬物間相互作用の要因として、薬物代謝における相互作用については古くから検討され、その予測方法についても盛んに研究が行われてきた。近年、薬物の吸収・分布・排泄に種々のトランスポーターが関わることが明らかとなり、それらを介する相互作用の重要性についても認識されつつある。本研究では、肝臓への取り込みトランスポーターの阻害に基づく薬物間相互作用について、in vitro試験データおよび各薬物の体内動態情報から生理学的薬物速度論モデルを用いて定量的に予測する方法を確立することを目的としている。 一例として、速効型インスリン分泌促進薬であるレパグリニドの血中濃度は、臨床において、イトラコナゾールおよびゲムフィブロジルの併用により大きく上昇することが報告されている。本年度は、この血中濃度上昇のメカニズムについて検討することを目的として解析を行った。レパグリニドの肝取り込みに関与するトランスポーターであるOATP1B1、肝代謝に関与する酵素であるCYP3A4およびCYP2C8が上記の併用薬によって阻害されたことを仮定し、各薬物の体内動態パラメータおよび阻害に関するパラメータを生理学的薬物速度論モデルに代入することにより、血中レパグリニド濃度推移のシミュレーションを行った。 その結果、イトラコナゾール、ゲムフィブロジルおよびその抱合代謝物(グルクロナイド)によるOATP1B1の阻害、イトラコナゾールによるCYP3A4の阻害、ゲムフィブロジルグルクロナイドによるCYP2C8の阻害を考慮することにより、臨床で報告された各条件での血中レパグリニド濃度推移をほぼ再現することができた。すなわち、イトラコナゾールおよびゲムフィブロジルを併用したときの血中レパグリニド濃度の上昇は、肝取り込みおよび肝代謝の阻害により説明できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床で報告されている薬物間相互作用の一例について、生理学的薬物速度論モデルを用いた解析を実施することにより、肝臓への取り込みトランスポーターおよび代謝酵素の両者の阻害に基づく相互作用であることを推定することができた。研究成果について、国内外で学会発表を行った。現在、投稿論文を作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
レパグリニドとイトラコナゾールおよびゲムフィブロジルとの薬物間相互作用の解析において、一部のパラメータをin vitro試験で測定し生理学的薬物速度論モデルに代入することにより、解析の精度を向上させ、他の薬物間相互作用にも応用可能なモデルを構築する。さらに、同様に肝臓への取り込みトランスポーターが関与すると推定される他の薬物間相互作用の事例を収集し、同様な解析を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
相互作用を受ける薬物の消失に関与する代謝酵素およびトランスポーター、さらにそれらの寄与率を、ヒト肝ミクロソーム、凍結ヒト肝細胞等を用いたin vitro試験により測定する。また、同様のin vitro試験により併用薬(阻害薬)による代謝酵素・トランスポーター阻害活性を測定し、阻害定数を算出する。得られたパラメータを生理学的薬物速度論モデルに代入し、血中薬物濃度推移をシミュレーションすることにより、臨床での薬物間相互作用の再現を試みるとともに、種々の薬物の組合せに適用できるモデルの構築を目指す。
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