研究課題/領域番号 |
23590204
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
伊藤 清美 武蔵野大学, 薬学研究所, 教授 (60232435)
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研究分担者 |
工藤 敏之 武蔵野大学, 薬学研究所, 助教 (10584815)
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キーワード | 薬物間相互作用 / トランスポーター / 生理学的薬物速度論 / 定量的予測 |
研究概要 |
昨年度に引き続き、イトラコナゾールおよびゲムフィブロジルの併用によるレパグリニドの血中濃度上昇を例として取り上げ、薬物の肝臓への取り込みと肝臓での代謝が共に阻害されることによる薬物間相互作用について、生理学的薬物速度論モデルに基づく解析を行った。まずイトラコナゾールおよびゲムフィブロジルとその抱合代謝物(グルクロナイド)について、それぞれ生理学的薬物速度論モデルを構築し、報告されている血中濃度推移に合うように体内動態パラメータを設定した。それらのパラメータを固定し、各々の濃度に応じたレパグリニドの肝取り込み(OATP1B1)および肝代謝(CYP3A4およびCYP2C8)の阻害を生理学的薬物速度論モデルに組み入れることにより、報告されているレパグリニドの4条件での血中濃度推移(単独投与時、イトラコナゾール併用時、ゲムフィブロジル併用時、両者併用時)に対して非線形最小二乗法による同時fittingを行い、血中濃度上昇を定量的に説明できるパラメータを算出した。その結果、各々の阻害パラメータおよびレパグリニドがCYP2C8で代謝される割合として、既報およびin vitro実験結果とそれぞれ矛盾しない値が得られ、それらの値を用いたシミュレーションにより、ゲムフィブロジルの投与量や投与タイミングを変えた場合の相互作用についても説明可能であることが確認された。すなわち、イトラコナゾールおよびゲムフィブロジルとレパグリニドとの顕著な相互作用は、レパグリニドの複数の消失経路が同時に阻害されたことによることが示唆された。さらに、本モデルを他の薬物間相互作用についても適用する目的で、クラリスロマイシンの併用によるグリベンクラミドの血中濃度上昇について、肝取り込み(OATP1B1)および肝代謝(CYP3A4およびCYP2C9)の阻害を組み入れた生理学的薬物速度論モデルに基づく解析を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床で報告されているレパグリニドとイトラコナゾールおよびゲムフィブロジルとの相互作用について、肝取り込みおよび肝代謝の両者の阻害を考慮した生理学的薬物速度論モデルにより解析を実施し、血中濃度上昇を定量的に説明できるパラメータを推定することができた。レパグリニドの代謝におけるCYP3A4とCYP2C8の寄与率については、ヒト肝ミクロソームを用いたin vitro試験を実施し、解析結果と矛盾しない結果が得られた。研究成果について、国内外で学会発表を行うとともに、Drug Metabolism and Dispositionに投稿し、掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに構築した生理学的薬物速度論モデルを他の薬物間相互作用についても適用できる可能性について検討し、必要に応じてモデルの改良を重ねることで、肝取り込みと肝代謝の両者が関与する相互作用を定量的に予測する方法を確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度に引き続き、クラリスロマイシンの併用によるグリベンクラミドの血中濃度上昇について、肝取り込み(OATP1B1)および肝代謝(CYP3A4およびCYP2C9)の阻害を組み入れた生理学的薬物速度論モデルに基づく解析を実施することで、モデルの妥当性を検討する。また、ラットおよびヒト肝細胞を用いたin vitro試験により肝取り込みおよび肝代謝の阻害パラメータを算出し、さらに同様のメカニズムが推定される他の相互作用についての解析とも併せることにより、医薬品開発においてin vitro試験および体内動態情報から薬物間相互作用を精度良く予測するための方法論について検討する。
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