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2012 年度 実施状況報告書

脳エネルギーの代替にケトン体を利用するアルツハイマー病の新規治療戦略

研究課題

研究課題/領域番号 23590205
研究機関新潟薬科大学

研究代表者

大和 進  新潟薬科大学, 薬学部, 教授 (60057370)

研究分担者 三井田 孝  順天堂大学, 医学部, 教授 (80260545)
立川 英一  東京薬科大学, 薬学部, 教授 (50146031)
中川 沙織  新潟薬科大学, 薬学部, 助教 (30410228)
キーワードケトン体 / アルツハイマー病 / アセト酢酸 / HMG-CoAリアーゼ活性 / 脳エネルギー
研究概要

脳内エネルギーは通常、主にグルコース代謝の解糖系およびTCA回路によって産生されるが、アルツハイマー病においては、Aβ42の蓄積によりピルビン酸デヒドロゲナーゼが阻害され、グルコースからのエネルギー生成能が低下してエネルギー不足になるといわれている。しかしながら、脳内ではグルコースのほかにケトン体(主にアセト酢酸)からエネルギーを獲得できる。このケトン体は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼを介さずにエネルギーを産生することができるため、ケトン体を促進あるいは活性化させる物質の探索は、アルツハイマー病の新規治療対策となると考えられる。
本年度は、昨年度に引き続き、肝由来培養細胞を用いてHMG-CoAリアーゼ活性を測定し、薬物およびサプリメントのHMG-CoAリアーゼ活性を促進する物質の探索を行った。さらに脳由来培養細胞を用いて、アルツハイマー病バイオマーカーであるAβ42の定量法を確立し、ケトン体添加によるATPの産生量、Aβ42の生成量の変化を検討した。
HMG-CoAリアーゼ活性促進物質の探索については、アセチル基がHMG-CoAリアーゼの基質として重要であることが報告されていることから、アセチル基を持つ物質6種類について検討した。その結果、N-アセチル-L-ロイシンおよびN-アセチル-Dグルコサミンを加えて長時間培養したところ、HMG-CoAリアーゼ活性を促進させる傾向が、若干ではあるが認められた。
また、脳由来培養細胞を用いた研究では、IMR-32細胞がAβ42を多く産生することを明らかにし、このIMR-32細胞を用いて、細胞培養液中にアセト酢酸を添加したところATP産生量が増加し、Aβ42生成量が微減することを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

アルツハイマー病の治療においては、ケトン体を増加させることが有用ではないかと考えており、今回の実験結果で、ケトン体がアルツハイマー病のバイオマーカーであるAβ42生成を微減させる結果を得たことから、本研究のアプローチが有用であることの一端が示された。

今後の研究の推進方策

HMG-CoAリアーゼ活性促進作用を持つ可能性のあるN-アセチル-L-ロイシン、N-アセチル-Dグルコサミンおよびカプリル酸トリグリセリドなどを中心にHMG-CoAリアーゼの活性促進物質を探索する。現在、HMG-CoAリアーゼ活性の測定に生成されたアセト酢酸を定量しているが、揮発性があるため、長時間培養におけるHMG-CoAリアーゼ活性測定には不向きと考えられた。今後は、RT-PCR法を用いてHMG-CoAリアーゼおよびHMG-CoAレダクターゼのmRNA定量を行うことで検討することとする。また、肝由来細胞だけではなく脳由来培養細胞についても検討を行い、脳細胞に対してより作用の強いものを選定する。
また、脳由来培養細胞であるIMR-32細胞を用いてケトン体(アセト酢酸および3β-ヒドロキシ酪酸)の添加におけるアルツハイマー病バイオマーカーであるAβ42の減少およびATP産生量の増加については、更に詳細に検討しエネルギー代替としてのケトン体の有用性を明らかにする。さらに、長時間培養でHMG-CoAリアーゼ活性促進作用が認められた化合物(N-アセチル-L-ロイシン、N-アセチル-Dグルコサミンおよびカプリル酸トリグリセリドなど)についても同様に検討し、アルツハイマー病の新規治療法としてのHMG-CoAリアーゼ活性促進物質の有用性について検討する。

次年度の研究費の使用計画

次年度は消耗品として、アルツハイマー病バイオマーカーの測定のためのチューブや抗体、ELISAキット、細胞培養のための培地、mRNA定量のためのPCR用試薬、ケトン体定量のための移動相溶媒やカラムなどに使用する。また、5月にミラノ(イタリア)で開催されるEuromedlabo2013にて、「Measurement of 3-Hydroxy-3-Methylglutaryl-Coenzyme A (HMG-CoA) Lyase Activity in Human Hepatoma HepG2 Cell Extracts and Effects of Polyphenols on Its Activity」の題目で発表するための旅費に充てる。さらに、「HMG-CoAリアーゼに作用するポリフェノールの効果」および「ケトン体のAβ42の減少作用」の論文投稿に必要な費用とする。
共同研究者である三井田孝博士の次年度研究費の使用計画であるが、24年度分の繰り越し金である189791円は、アルツハイマー病バイオマーカー測定のための抗体、サンプル採取のためのチューブ、ボックスなどの消耗品購入に充てる予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] Measurement of 3-Hydroxy-3-methylglutaryl-coenzyme A (HMG-CoA) lyase activity in human hepatoma HepG2 Cell extracts and effects of polyphenols on its activity2013

    • 著者名/発表者名
      Susumu Yamato, Saori Nakagawa, Yuko Kojima, Koichi Sekino
    • 学会等名
      20th IFCC-EFLM European Congress of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine
    • 発表場所
      ミラノ(イタリア)
    • 年月日
      20130519-20130523
  • [学会発表] 神経芽細胞腫由来脳細胞から産生されるアミロイドベータタンパク質(Abeta42)に対するケトン体の影響2013

    • 著者名/発表者名
      中川 沙織、倉田 遥、大和 進
    • 学会等名
      日本薬学会第133年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20130328-20130330

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公開日: 2014-07-24  

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