研究課題/領域番号 |
23590207
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
池田 賢二 大阪大谷大学, 薬学部, 講師 (10434812)
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キーワード | 胎盤関門 / 胎盤透過 / トロホブラスト / BCRP / 胎盤 / DJEG / JEG-3 / 物質透過モデル |
研究概要 |
妊娠時薬物療法における胎児安全性の確保を目的とする情報蓄積の一環として、申請者はより簡便かつ、より in vivoを反映したin vitro包括的胎盤薬物透過評価モデルを確立することに取り組んでいる。薬物の胎盤関門透過を評価するためには、細胞間隙透過性がシンシチオトロホブラスト層に類似しており、かつシンシチオトロホブラスト層に発現しているトランスポーター群の機能を含めた経細胞輸送を反映できるモデルを作製する必要がある。これまでに、胎盤関門の主要層であるシンシチオトロホブラスト層に類似したモデル細胞層の構築に向けて細胞株およびその培養環境を検討してきた。まず、細胞間隙透過と逆相関する経上皮電気抵抗値(TEER値)の上昇、およびシンシチオトロホブラスト様分化指標のmRNA発現を確認することで、CS-C®培地によって培養したJEG-3細胞層(DJEG)が、胎盤関門モデルとして現状では最適な細胞層であることを見いだしている。さらにシンシチオトロホブラスト層で最も高発現である排出トランスポーターbreast cancer resistance protein (BCRP)が、DJEGにおいても高発現であることが認められており、本年度はBCRPの基質であるシメチジンを用いてDJEG細胞層におけるBCRPの透過機能解析に取り組んできた。DJEG細胞層を介したシメチジンの透過性は、胎児側(F)から母体側(M)への濃度依存的な飽和性を示し、かつFとMのシメチジン濃度を同濃度とした場合の90分後におけるF/Mシメチジン濃度比(F/M DJEG)は、0.51±0.15と低レベルであることが認められたことから、DJEG細胞層がBCRPの透過機能に関してもin vivoとよく相関していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度においては、胎盤関門モデルに最適な細胞株と培養環境の検討の後、物質透過機能に関して生体内をできる限り反映できるモデルとなる可能性を検討してきた。その結果、in vivoと同様の分化指標の発現が認められていたDJEG細胞層は、数種の物質透過機能に関しても胎盤関門の主要層であるシンシチオトロホブラスト層に極めて類似した機能を発揮していることが判明した。これらは、当該年度の目的に対する結果をおおむね満たしており、順調に進展していると言える。しかしながら、今後さらに複数の胎盤関門透過性が既知の物質における透過機能の解析が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
以降、細胞機能特性としてシンシチオトロホブラスト類似性が認められたDJEG細胞層について、さらなる物質透過機能評価を行う。胎盤関門透過性が既知の薬物を用いてDJEGの経細胞輸送に関わる細胞機能を評価した後、最終的に包括的な医薬品の胎盤移行性を検証することが平成25年度の目的となる。また、経細胞輸送機能を評価しうる胎盤関門モデルとしての妥当性を検討するために、臍帯血/母体血の血中濃度比などの臨床データを有する医薬品を用いて、本モデルによるF/M DJEGを解析しin vivo相関性を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費使用計画は、概ね予定通りである。平成25年度では、確立した本DJEGモデル細胞層において、包括的に医薬品の胎盤薬物透過性を評価し、胎盤関門モデルを確立するものとするとともに、医薬品の胎盤関門透過性との相関性を明らかとする。平成25年度の研究費は、主に睡眠導入剤、抗うつ薬などの各疾患毎の治療薬から数種の医薬品を選別し、より良好なin vivo相関性を認めるモデル作製条件も同時に再検討するための試薬・器具の購入費に充てる。また、最終的な研究結果の発表と情報発信に2割程度の使用を予定している。
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