研究課題/領域番号 |
23590210
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
岩城 正宏 近畿大学, 薬学部, 教授 (30140346)
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研究分担者 |
川瀬 篤史 近畿大学, 薬学部, 講師 (80411578)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 反応性代謝物 / 肝毒性 / siRNA / アシルグルクロナイド |
研究概要 |
薬物性毒性発現の原因の一つとして,薬物代謝により生成した反応性代謝物によるタンパク質との共有結合体生成がある。本研究は非ステロイド系抗炎症薬 (NSAIDs)の親電子性反応性代謝物 (ERM)の共有結合生成にどの肝解毒機構(肝代謝酵素およびトランスポーター)の機能低下が強く関係するのかアデノウイルスベクターを利用したsiRNAによるノックダウン法によりラットを用いてin vivoで検討する。平成23年度に計画していた3つの項目に対する成果を以下に示す。1. MRP2およびMRP3を効率よくノックダウンするsiRNAをin vitro試験により検討した。効果的にノックダウン可能な配列を決定した後,それらをアデノウイルスベクターに組み込み精製した。2. MRP3に対して効率的にターゲットの発現を抑制するアデノウイルスベクターを投与し,抑制効果について検討を行った。今回検討した典型的なウイルス投与量,期間では明確なターゲット分子の抑制効果が認められず,現在投与量,投与期間を最適化し抑制効果が得られるかを評価している。3. In vivoでアデノウイルスベクターを用いたMRP3に対する抑制効果を検討しており,その間にin vitroでターゲット分子を抑制したときのジクロフェナクの共有結合生成および肝障害について評価している。このとき,ジクロフェナクの未変化体とグルクロン酸抱合体を併せて定量する方法についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたターゲット分子はCYP2C11, UGT2B, CoAthioester合成律速酵素,MRP2およびMRP3であったが,現在,MRP2およびMRP3について検討を進めている。理由としてこれらの分子はグルクロン酸抱合体の細胞外への排出において重要な役割を担っており,まず排出過程において重要な役割を担っているこれらの因子を優先した。MRP2およびMRP3のうち,MRP3 shRNAはアデノウイルスベクターへの挿入が完了し,現在静脈内投与後のノックダウン効率について検討を行っている。しかしながら,MRP2については効率的にノックダウンする配列は決定したもののアデノウイルスベクターに組み入れる段階でミューテーションが入ってしまい構築できていない。この間に,in vitroラット初代培養肝細胞を用い,各因子をノックダウンした際の共有結合体変動について,親薬物とグルクロン酸抱合体の同時定量法について検討を行った。このように,ターゲット分子のうち,MRP2およびMRP3を中心に検討を行っており,その他の代謝酵素については十分な検討が行えていないため,おおむね順調に進展していると自己点検による評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに検討してきたMRP2およびMRP3以外のターゲット分子であるCYP2C11, UGT2B, CoAthioester合成律速酵素について配列の決定およびshRNA発現アデノウイルスベクターの構築を行う。その後,それらの因子を単独あるいは組み合わせてノックダウンした際のグルクロン酸抱合体の肝蓄積および共有結合体生成に対する影響について検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使用計画は各ターゲット分子に対するshRNA合成,ノックダウン効率検討のin vitro試験,効率的にノックダウン可能なshRNA配列発現アデノウイルスベクター作製における消耗品の購入に使用する予定である。具体的にはノックダウン効率検討は細胞のluciferase assayによりターゲット遺伝子のノックダウン効率を確認するため,細胞培養関連の消耗品,遺伝子導入試薬およびluciferase assay試薬が必要となる。shRNA配列発現アデノウイルスベクターの作製には細胞に感染後に精製を行うための試薬が必要となる。また,今年度残高は実験動物の購入に使用する。
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