研究課題/領域番号 |
23590211
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
杉岡 信幸 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (40418934)
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研究分担者 |
牛込 秀隆 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90405283)
福島 恵造 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (30454474)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 薬物動態変動 / 脂質・蛋白酸化 |
研究概要 |
高脂肪特殊飼料摂取により作成した肥満モデルラットにおける シクロスポリンの静脈内投与、小腸ループ内投与後の薬物動態を詳細に算出し、さらに肝臓の重量、脂質量、シクロスポリンの取り込み量、in vitro 代謝実験による代謝能と薬物動態値との関連を検討した。血中濃度-時間曲線化面積(AUC)は有意に増加し、分布容積、全身クリアランスは減少した。また肝細胞あたりのシクロスポリンの取り込みは増加し、小腸上皮透過量の減少が認められた。肥満モデルラットでは著明な脂肪肝・重量増加が観察されたが、蛋白量あたりの代謝酵素活性に差は認められなかった。また肝取り込み量の増加と血中脂質増加によるシクロスポリン血中遊離型分率の低下が相殺され結果として肝クリアランスに差は認められなかったと推察される。したがってAUC増加は遊離型分率の低下による組織移行低下、分布容積の減少が原因であることが示唆された。臨床においては移植患者15例の血液の酸化度・抗酸化度とシクロスポリン・タクロリムスの血中動態および臨床検査値との関連を比較した。脂質量、低比重リポ蛋白量とシクロスポリンのAUCには正の相関が認められ、酸化度とは負の相関を示す傾向が認められたが公表するに足るデータには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎実験計画書に挙げたシクロスポリンについては、その物性から予想していたような結果が得られた。しかしながらタクロリムスについては結果がネガティブであったことと、定量感度の不足から、考察するに足るデータは得られていないが、シクロスポリンとの比較、免疫抑制剤としての両薬剤の使い分けという面からはネガティブなデータもまた有用であり、総括の際に必要なデータである。臨床検討においては、順調に移植患者検体の酸化度・抗酸化度の測定・データ収集は順調に進んでいる。今までのところ症例数の不足から、統計学的な有意差が得られるには至っていないものの予想通りの傾向は得られており、基礎実験でのメカニズム解明とともに今後は進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、脂質異常症、糖尿病または酸化ストレスを与えたモデルラットの血液における血中脂質・蛋白の変性に起因する血中薬物分布(血球移行性、蛋白結合率、血中脂質親和性)の変動に焦点を当て、薬物動態変動との関連を検討する予定である。また、もちろん臨床データ収集も継続し、十分な例数が得られれば、臨床検査値と、血液の酸化度・抗酸化度と薬物動態値の関連検討のため、多変量解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物・測定試薬等の消耗品の消費が大きいため、使用計画の大半を占める。他に国内学会発表のための旅費、論文作成のための英文校正料を予定している。
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