研究課題/領域番号 |
23590211
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
杉岡 信幸 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (40418934)
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研究分担者 |
牛込 秀隆 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90405283)
福島 恵造 神戸学院大学, 薬学部, 助教 (30454474)
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キーワード | 薬物動態変動 / 脂質・蛋白酸化 |
研究概要 |
ferric nitriloacetate腹腔内投与による酸化ストレスを負荷したラット(OSラット)において、全血を採取し、CsA・Tacを添加後、厳密な温度・添加後経過時間の管理のもと遠心分離によって得られた血漿中の各薬物濃度定量し、血球移行率を算出、コントロールのそれと比較検討した。また、血液の酸化度、抗酸化力をフリーラジカル解析装置 Free carpe diemによって、血中か酸化脂質をチオバルビツール酸法によって評価した。OSラットのCsAにおける血球移行率は0.6倍に減少し、血中酸化度は約4倍に増加した。これらは酸化ストレスが赤血球に対するCsAの親和性・赤血球膜透過性を変化させたものと考えられる。現在、これらの結果を論文執筆中である。血球移行率の変動は、赤血球中にその多くが存在するCsAの血中分布を変動させ、組織移行や肝クリアランスに影響を及ぼすことが示唆されるため、OSラットのおけるCsAの血球移行率の変動と血中動態変動との関連を現在検討中であり、In vivoでの結果を踏まえて、論文・学会発表の予定である。 Tacにおいては血漿中濃度が定量感度の不足から、臨床用量で観察される全血中濃度付近では血球移行率が算出不能であったため、定量感度を改善し、再度検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度と同様に基礎実験計画書に挙げたシクロスポリンについては、その物性から予想していたような結果が得られている。しかしながらタクロリムスについては定量感度の不足から、考察するに足るデータは得られていない。 臨床検討においては、昨年度に加え、移植患者検体の酸化度・抗酸化度の測定・データ収集は順調に進んでいる。31症例のデータが得られているが、前年度に引き続き、脂質量、低比重リポ蛋白量とシクロスポリンのAUCには正の相関が認められ、酸化度とは負の相関を示す傾向が認められたが、いまだ統計学的な有意差が得られるには至っていない。このことは、十分な血中での酸化度を示す検体が少ないことに起因している。しかしながら予想通りの傾向は得られており、基礎実験でのメカニズム解明とともに今後は進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、糖尿病または酸化ストレスを与えたモデルラットの血液における血中脂質・蛋白の変性に起因する血中薬物分布(蛋白結合率、血中脂質親和性)の変動をさらに検討を加え、薬物動態との関連を検討する。また、酸化ストレスは肝代謝酵素蛋白を変性させ、その活性に影響を及ぼすことも考えられ、実際、研究代表者は、OSラットにおいて、抗HIV薬アタザナビルの代謝能が変動することを明らかにしている。基礎実験計画書に挙げた酸化ストレスによる肝臓での代謝酵素の酸化変性をプロテインカルボニルの測定より評価し、肝ミクロソームを用いたin vitro の代謝実験よりその活性の変動をも検討、さらには薬物動態変動との関連を検討する予定である。また、臨床データ収集も継続し、最終的に、臨床検査値と血液の酸化度・抗酸化度と薬物動態値の関連検討のため、多変量解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物・測定試薬等の消耗品の消費が大きいため、使用計画の大半を占める。他に国内学会発表のための旅費、論文作成のための英文校正料を予定している。
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