医薬品の安全性に関する重大な知見が新たに得られた場合には、規制当局や製薬会社は安全性情報の発出や添付文書の改訂等によって、当該情報を医療機関に周知する。このような安全性に関する情報伝達は医薬品の適正使用にとって極めて重要である事から、効率的な情報伝達法を検証する必要がある。そこで、本研究においては、メトトレキサート(MTX)服用患者での肝炎ウイルス検査等の必要性を指示した医薬品・医療機器等安全性情報(平成22年3月31日に発出)が、医療機関にどの程度、周知されて行ったのかについてナショナルレセプトデータベースのレセプト情報を用いて検討した。具体的には、MTX服用患者において、医薬品・医療機器等安全性情報で指示のあった肝炎ウイルス検査の実施率を指標として、安全性情報の浸透率を検討した。その結果、ウイルス検査の実施については、安全性情報発出直前直後の平成22年3~4月期において実施率に変化はなく、1月~12月の年間を通して変化はなかった。以上の結果から、医薬品・医療機器等安全性情報の文書発出そのものによる影響は低いことが示唆された。次に、どのような医療環境が安全性に関する情報の浸透に影響を与えているのか検討したところ、医薬情報室を備えている医療機関での肝炎ウイルス検査実施率が高かった。以上の結果から、安全性情報の浸透には、安全性情報に関する発出文書そのものよりも、情報を受け取る側の体制が重要であると推測された。
|