研究課題/領域番号 |
23590214
|
研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
石井 明子 国立医薬品食品衛生研究所, 生物薬品部, 室長 (50291117)
|
研究分担者 |
鈴木 琢雄 国立医薬品食品衛生研究所, 生物薬品部, 主任研究官 (10415466)
多田 稔 国立医薬品食品衛生研究所, 生物薬品部, 研究員 (50506954)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 抗体医薬品 / Fc受容体 / DC-SIGN |
研究概要 |
DC-SIGN結合測定系の確立のため以下の実験を行った。1.DC-SIGN発現細胞株の樹立:ヒトDC-SIGN発現プラスミドベクターを構築しJurkat細胞に導入した後、薬剤を用いた選別によりDC-SIGNを安定発現するJurkat細胞株を樹立した。抗DC-SIGN抗体を用いて蛍光免疫染色した細胞をフローサイトメーターで解析することで、樹立した細胞の細胞膜表面におけるDC-SIGNの発現を確認した。2.シアル酸付加型IgGの調製: 免疫グロブリン製剤を試料として、シアル酸結合性のSNAレクチンを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより、シアル酸付加型IgGを精製した。SNAレクチンを用いたレクチンブロットにより、精製したIgGへのシアル酸の付加を確認した。3.Cell-based binding assay:1で樹立したDC-SIGNを安定発現するJurkat細胞に対し、2で精製したシアル酸付加型IgGを添加し、蛍光二次抗体で標識した後、フローサイトメーターによる解析を行った。高濃度(100 μg/ml)のIgGの添加でも特異的な結合は検出されず、本実験系ではシアル酸付加型IgGのDC-SIGNに対する結合能を測定することはできなかった。DC-SIGNに対するIgGの結合はFc領域のN結合型糖鎖へのシアル酸の付加が関与するとされているが、本実験で用いた免疫グロブリン製剤中にはFab領域にシアル酸を含む糖鎖が付加されたものが多く存在するため、Fc領域にシアル酸付加型糖鎖を有するIgGが十分に濃縮されていない可能性が考えられる。次年度はFc領域の糖鎖にシアル酸が付加したIgGの調製を行うとともに、SPR法などのより高感度に結合測定が可能な実験系の適応可能性について検討し、引き続きDC-SIGN結合測定系の構築を進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、免疫グロブリン製剤の抗炎症作用を担うFc受容体として機能することが見出されたDC-SIGN (Dendritic cell-specific intercellular adhesion molecule-3-grabbing non-integrin)に着目して、DC-SIGNへの結合/活性化能に関するIgGの構造活性相関の解析、及び、DC-SIGNが抗原提示細胞へのIgG取り込みと抗IgG抗体産生促進に関与する可能性の検証に関する検討を行い、モノクローナル抗体医薬品の構造・機能ならびに免疫原性とDC-SIGNの関連を明らかにすることである。 平成23年度の研究計画は、DC-SIGNへの結合/活性化能に関する抗体医薬品の構造活性相関解析に必要な実験系として、1)DC-SIGN発現細胞の樹立、および、2)抗体医薬品のDC-SIGN結合性評価系の確立を行うことであった。 当初の計画通り、抗体医薬品のDC-SIGN結合測定系の確立に取り組み、フローサイトメトリーによる結合活性測定に用いるヒトDC-SIGN発現細胞株を樹立した。また、DC-SIGN結合測定系の陽性対照となる試料として、文献に従い、シアル酸結合性レクチンを用いて、免疫グロブリン製剤からシアル酸付加型IgGを精製した。樹立したDC-SIGN発現細胞株、および、調製したシアル酸付加型IgGを用い、フローサイトメトリーによる結合実験を行った結果、DC-SIGNへのシアル酸付加型IgGの結合は検出できなかったが、SPR法を用いた結合測定系の確立、及び、Fc領域へのシアル酸付加量の高い抗体調製のための準備を進めており、ほぼ計画通りの進捗である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、低親和性の結合も検出可能なSPR法を用いたDC-SIGN結合測定系の確立を中心に、シアル酸付加型IgGのDC-SIGN結合性およびシグナル伝達に関する解析として、下記の検討を行う。(1)SPR法によるDC-SIGN結合測定系の確立:DC-SIGN-GSTあるいはDC-SIGN-Hisを用いたキャプチャー法により、DC-SIGNとシアル酸付加型IgGの結合を検出する方法を確立する。必要に応じて、モノクローナル抗体とシアル酸転移酵素をCHO細胞で共発現させ、シアル酸含量の高いIgGを調製して結合実験に用いる。(2)DC-SIGN結合性に関する構造活性相関:IgGサブクラスやシアル酸の種類(NeuAc, NeuGc)とDC-SIGN結合性の関連を解析する。(3)(1)(2)により、結合に関する構造活性相関に関するデータが得られた場合、DC-SIGN結合性が最も高いことが見出された分子種について、DC-SIGN発現細胞で惹起される免疫制御シグナル伝達分子の活性化能及びサイトカイン放出能を検証する。(4)シアル酸付加型IgGとFcγ受容体の結合性解析:シアル酸付加型IgGについて、ヒトFcγR各サブクラスとの結合能および受容体活性化能をシアル酸非付加型IgGと比較する。 現在、抗体医薬品の品質評価法に関する研究のため、表面プラズモン共鳴法を用いた各種Fc受容体との結合親和性評価系を確立中であり、その評価系を本研究に活用することにより、相乗的な研究の推進を図る。また、結合実験に用いる各種組換えタンパク質の調製には、各種バイオ医薬品等の試験的製造に用いているCHO細胞や大腸菌を用いた発現系を活用し、効率的に研究を推進する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、主に試薬の購入費として使用する予定である。購入予定の主な試薬:Biacoreセンサーチップ、抗GST抗体または抗His抗体、組換えタンパク質発現用試薬(CHO free style MAX発現システム、QIAgenes Expression システム)
|