研究課題/領域番号 |
23590215
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
福井 彰雅 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 准教授 (80262103)
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キーワード | 細胞集団運動 / 発生学・形態形成学 / 細胞間接着 |
研究概要 |
ツメガエルの中内胚葉細胞はxSDF-1 を強制発現させた細胞に向かって集団で移動する。この系を用いて,細胞集団運動に対するxCXCR7の影響を調べた。昨年度までの研究でxCXCR7が新規の機能として細胞間の接着性を制御している可能性が示されたので,その内容についてさらに詳細な調査をおこなった。 最初に細胞の運動速度について調査をおこなった。集団状態と解離状態で平均速度は有意差が見られなかったが,解離状態の方が単位時間当たりの速度にばらつきが見られた。このことは,集団運動において細胞が協調的に同一方向へ移動する機構が存在することを示唆する。また,xCXCR7の情報伝達に必要とされるN末端やC末端を欠く変異体を強制発現させても細胞の解離は見られず,xCXCR7を通した情報伝達がSDF-1依存的な細胞間接着の変化に必要であることが示唆された。xCXCR7を過剰発現させたアニマルキャップでは中胚葉化による伸長運動が見られず,過剰なxCXCR7の情報伝達は収斂伸長運動に対して阻害的に働くことが示唆された。 細胞の集団運動において, 細胞は隣接する細胞とその接着性を微妙に調節しながら移動していくと考えられており,今回観察された現象は,xCXCR7が集団運動のための細胞間接着制御に関与していることを強く示唆している。分子レベルで直接細胞間接着を直接調整する情報伝達機構についての知見はこれまでほとんどなく,この研究は上皮-間充織遷移(EMT)やガンの浸潤・転移のメカニズムの解明にも寄与する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り阻害剤及びxCXCR7変異体による細胞間接着の制御について、新しい知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
阻害剤による実験から、細胞間の接着を制御している情報伝達系がERK1/2を介している可能性が示唆されている。今後はERK activatorによって細胞分散が誘引される可能性について検証すると共に、具体的にどの分子が情報伝達に関与しているか、候補タンパク質の活性化もしくは不活性化による影響を調べる。また、GFP融合型のカドヘリン関連分子を強制発現させ、SDF刺激によるその局在の変化を観察することで時間依存的な接着性の変化を観察すると共に、現在のような数時間に及ぶタイムラプス撮影に変わるより迅速なアッセイ法の開発を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当無し
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