研究課題
本研究は骨盤出口筋の形態の構造を明らかにすることで、骨盤手術における機能温存を指向した手術術式の開発をめざした。今年度、ヒトにおいては、組織学的観察を中心に解析を行った。本研究には、解剖実習体(男性 3体、女性3体)を専用に用いた。直腸壁と肛門挙筋、外肛門括約筋との付着の関連性については、直腸の周りを囲むということは言われていたが、その固定様式についてはあまり興味の対象とはなってこなかった。これを明らかにするため、直腸壁と肛門挙筋の境界部を中心に、組織標本を作製し、HE染色、Elastica van Gieson染色、骨格筋・平滑筋に対する免疫染色によって観察した。その結果、特に直腸の前側方から側方にかけて、肛門挙筋上層の骨格筋成分が、腱成分を介さずに直接的に直腸の外輪層である縦走平滑筋に付着しているのが観察された。さらに、肛門挙筋の下層はそのまま直腸壁を取り囲むように走行していた。外肛門括約筋は上部(深部)では肛門挙筋の外周を囲むように、そして浅部では直腸と接するように、さらに皮下外括約筋と言われる部分では直腸縦走筋である平滑筋の線維が骨格筋を貫くようにして直腸との固定性を高めていることがわかった。つまり骨格筋構造である骨盤出口筋は、直腸縦走筋との密接な関係を持つことで、肛門の安定的な機能を維持していることが明らかになった。また、これまで肛門外科においては、Treitzの筋と呼ばれる平滑筋構造は、直腸縦走筋層が内肛門括約筋を貫いていると考えられてきた。しかし、これは直腸輪走筋層の最内部の層が縦走するように走ることで作られていることを示す結果が得られた。さらに、内肛門括約筋の層を安定化させるべく両者をつなぐ結合組織線維が入り込むことによって両者がずれないような機構が形成されているということが明らかになった。これらの構造については、マウスでも同様であることが確かめられた。
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