研究課題/領域番号 |
23590219
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
青山 裕彦 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70143948)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 形態形成 / 軸骨格 / 部域化 / 体節中胚葉 / 組織間相互作用 / ニワトリ / マウス / 比較発生学 |
研究概要 |
1.頸椎・胸椎+肋骨・腰仙椎の相同性~ニワトリ胚:従来から頸椎や腰椎,仙椎に肋骨との相同部位の存在がいわれている.これまでに,ニワトリ胚の椎骨について,軟骨形成,骨化中心のパターン解析によりそれを同定した(増田佑).さらに,一般染色,および関節部に特異的に発現する遺伝子,GDF5およびErgの発現パターンから,肋椎関節の形成過程,及びその相同部位においては,ともに細胞の密度が高い部分が生じる.その後,胸部ではそこに腔所が現れ関節が形成される.一方,頸部や腰部では,再び周囲の組織と同様の均一な組織となる.このとき,肋椎関節及びその相同部位で,GDF5およびErgの発現がみられた.以上のことから,胸部以外の椎骨でも肋椎関節形成の初期過程は共通であると言える.(増田佑・志村菜穂子). 2.遠位肋骨形成における表皮外胚葉の役割とその分子機構~ニワトリ胚(1):体節と表皮の間にプラスチックフィルムを挟むと肋骨遠位部が形成されない(Aoyamaら,2005).今回は,体節から肋骨形成に至るまでの細胞動態を一般染色により明らかにした.これまで,表皮-体節間相互作用の阻害により肋骨の欠損を認めているが,その他の体壁組織についてはまだ観察していなかった.とりわけ肋骨と同じく体節を起源とする筋について検討したところ,肋骨の欠損部では肋間筋,外腹斜筋が欠損していることが認められた.一方,側板に由来する結合組織や胸膜には異常が見られなかった.3.遠位肋骨胸骨部形成における側板中胚葉の関わり~ニワトリ胚:片側の体節-側板中胚葉壁側板間の相互作用を阻害すると,遠位肋骨胸骨部が欠損する.肋骨形成過程がどのように阻害されたか,一般染色および体節細胞を蛍光蛋白質GFPで安定に標識したもので追跡しようとした.現在,その手法が確立し実験胚の解析に取りかかったところである(范海明)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.頸椎・胸椎+肋骨・腰仙椎の相同性~ニワトリ胚:ほぼ結果が出ているが,主になって研究を行っていた大学院生が今年度途中から留学してしまったため,別の院生に引き継がせているが,まだ実験系に習熟しておらずやや進展に遅れがみられる.2.遠位肋骨形成における表皮外胚葉の役割とその分子機構~ニワトリ胚(1):今年度は,この実験系が体節由来の構造にのみ影響しその他の組織は正常に見えることをヘマトキシリン・エオジン染色,およびアザン染色により明らかにした.計画ではその分子機構を解明するために,Wntシグナル伝達系の分子についてその遺伝子発現パターンの解析を行う予定であったがまだ出来ていない.3.遠位肋骨胸骨部形成における側板中胚葉の関わり~ニワトリ胚:GFP遺伝子の導入にかなり手こずったがようやく遺伝子導入も軌道に乗って来だした.エレクトロポレーション法によりGFP遺伝子を組み込んだプラスミドを導入するのだが,導入の結果,胚に形態形成異常を引き起こすことが多かったため解析に使える胚が限られており,時間がかかったものである 以上のように,所期の目的はほぼ達成できてはいるものの,一部に遅れがみられる.
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今後の研究の推進方策 |
2012年度から13年度にかけて,ニワトリ胚を用いた表皮外胚葉-体節間相互作用の分子機構を追究すると共に,マウス胚との比較発生学を行い,個体発生の研究から系統発生について考察していきたい.1.頸椎・胸椎+肋骨・腰仙椎の相同性~マウス胚:ニワトリ胚と同様に,軟骨形成,骨化,関節形成のパターンを記載し,ニワトリとの異同を検討する. 2.遠位肋骨形成における表皮外胚葉の役割とその分子機構~ニワトリ胚(2):当初の予定では本年度に行うことにしていた,Wntシグナル伝達系の分子についてその遺伝子発現パターンをin situハイブリダイゼーションにより解析し,体節が表皮外胚葉の影響を受けて発生する場合,体節の中でもどの区画の細胞が表皮外胚葉に反応しうるかを明らかにする.この結果明らかになった分子について行うべき,強制発現実験や抑制実験による機能解析はさらに次年度に行うものとする.3.遠位肋骨形成における表皮外胚葉の役割とその分子機構~マウス胚:2.の結果を受けてマウス胚において,Wntシグナル伝達系の分子について発現パターンを調べ,ニワトリ胚のそれとの比較し,その結果から,遠位肋骨形成機構の相同性を考察する.これは,2の結果が出てから開始するため,その成果が得られるのは2013年度になる.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の残高は3960円であり,ニワトリ種卵にして約60個分である.週に200~300個使用するのでその一部に充当する.
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